研究課題/領域番号 |
15K06653
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
井戸 毅 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (50332185)
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研究分担者 |
清水 昭博 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (00390633)
谷池 晃 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (50283916)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 重イオンビームプローブ / 重イオン検出器 / GAM / 亜臨界不安定性 |
研究実績の概要 |
高エネルギー重イオンの検出効率を向上させるために検出器の改良を進めた。重イオンビームプローブ(HIBP)に適用して計測精度を向上させるためには検出効率の改良と同時に、10マイクロメートル程度のビーム検出位置精度を必要とする。この要求を満たすものとして微細メッシュを用いた検出器を新たに設計・製作した。従来の微細メッシュを用いた検出器は、検出効率は数倍向上するものの、位置分解能の悪化とチャンネル間のクロストークの発生が問題であった。これを改良するために新しく設計した検出器を、30keVのビームを用いて試験を行った結果、メッシュ間隔及びメッシュ間に印加するバイアス電圧を調整することにより、HIBPに用いるのに十分な位置分解能を得られることが確認できた。また、チャンネル間のクロストークが発生しないことが確認できた。次年度に大型ヘリカル装置(LHD)用HIBPで用いる6MeVのビームを用いた試験を行う予定である。 検出器開発と並行してLHDにおけるプラズマ実験のデータ解析も進めた。今年度の解析で、大局的揺らぎの一つである高速イオン励起測地線音波(EGAM)が励起されている時に、別のGAMが突発的に励起される新しい現象を発見した。この突発的GAMはEGAMと明確な相関を持ち、非線形励起されていることを、HIBP及び磁場コイルによる計測に基づき明らかにした(T. Ido, et al., Phys. Rev. Lett. , 116, 015002(2016))。また、この現象を説明するための理論モデルが共同研究を基に構築した(M. Lesur, et al., Phys. Rev. Lett. , 116, 015003(2016))。これにより、EGAMによって亜臨界不安定性であるGAMが励起された現象と説明することに成功し、磁場閉じ込めプラズマ中の揺らぎの新しい励起機構を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検出器開発の面では、当初の予定通り位置分解能及びクロストーク除去に成功した。 プラズマ実験の面では、計画立案当初の想定していなかった亜臨界不安定性励起の実証に成功し、計画以上の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
検出器開発の面では実機で用いる高エネルギー(1~6MeV)のビームを用いた性能試験を行う。これにより、高い検出効率、十分な位置分解能を持った検出器であることを実証し、実機に設置する。LHDにおける重水素実験開始時の中性子影響を事前に調べるために、神戸大学のタンデム加速器を使った検証実験も行う。 プラズマ物理実験においては、平成27年度に発見した亜臨界不安定性の特性、特にプラズマパラメータ依存性を詳しく調べ、核融合炉心プラズマの性能予測の向上を目指す。それと同時に、開発した検出器を実機に導入し、大局的揺らぎと微視的揺らぎの同時計測を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
一つの理由は国外出張先を変更したことである。これはプラズマ実験のデータ解析の結果、新しい現象の発見があり、この内容が当初予定していなかった平成28年度開催の国際会議の招待講演に採択されたため、平成27年度の会議への出席を中止し、こちらに出席することとしたためである。 また、平成27年度のLHD実験が中止となったことにより、開発した検出器をLHD用HIBP実機へ導入する時期を次年度に延期にし、その経費を次年度に回すことにしたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年6月末に行われるInternational Congress on Plasma Physics (ICPP 2016)に出席するための旅費として用いる。 また、検出器をLHD用HIBP実機に導入するためのフランジの改造及び中性子遮蔽の設置を行う。
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