研究課題/領域番号 |
15K06654
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
今川 信作 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (10232604)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ケーブル・イン・コンジット / 超伝導 / ねじり / ひずみ / 臨界電流 |
研究実績の概要 |
Nb3Sn超伝導線を多重に撚り合せて金属管(コンジット)に収納したケーブル・イン・コンジット導体では,超伝導線とコンジットの熱膨張率の違いにより,高温での生成熱処理からの冷却過程で超伝導線に0.6%程度の圧縮ひずみが生じ,そのために超伝導特性が低下することが大きな欠点となっている。本研究の目的は,コンジットを超伝導線の最終撚りと同じ方向に捩ることによって超伝導線の圧縮ひずみが軽減されて超伝導特性が向上することを実証し,本方式の大型導体への適用可能性を示すことである。 平成28年度は,実験サンプルの製作に必要な導体縮径治具と巻線治具の設計と製作を完了し,サンプルの製作に着手した。特に,長さ1 m程度のNb3Sn線と銅線を多重に撚り合わせたケーブルをステンレス管に挿入してから管を所定の寸法に縮径するための治具の設計に注力した。また,冷却・昇温の熱サイクルがサンプルの超伝導特性に影響を与える可能性があることから,試験方法と試験治具の見直しを行った。当初は,バネ形状の実験サンプルのバネ長さを変える度にクライスタットから取り出す計画であったが,サンプルをクライオスタット内に取り付け,液体ヘリウムに浸漬した状態で,サンプルのバネ長さを連続的に変えることのできる実験装置の設計を行い,サンプル拘束治具を完成させた。バネ形状のサンプルの上部を拘束する治具と下部を拘束する治具を製作し,下部の位置(高さ)をクライオスタットの外側から変えることのできる設計とした。バネ長さを変更できる範囲として2ピッチを確保した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度にケーブル・イン・コンジット縮小導体をバネ形状にした実験サンプルと試験装置を完成させて,実験を開始する計画であったが,サンプル製作治具と試験治具の設計の完成度を高めるための検討に時間を要したため,研究の進捗に遅れが生じている。実験サンプルの部品と製作のための治具は完成しており,また,試験装置の改造部分の設計も完了しており,今年度中に実験を行い,研究結果を取得できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず,実験サンプルのケーブル・イン・コンジット縮小導体1本を製作する。1本のNb3Sn線と17本の銅線が撚り合わされた3本撚りのサブケーブル6本を製作し,次に,冷却チャンネルを模擬して直径1.6 mmの銅線を中心に配置し,その回りに6本のサブケーブルを60 mm程度のピッチ長で巻き付けてコンジットに挿入する。コンジット材にはステンレス配管を使用し,撚線挿入後に35%程度のボイド率(断面内の空隙の割合)となるように治具を用いてコンジットを縮径する。続いて,治具を用いてバネ形状に巻線してから超伝導相の生成熱処理を行い,1本目の実験サンプルを製作する。このサンプルをバネ長さを制御できる試験治具に取り付け,9 Tの外部磁場コイルを備えた小型クライオスタットに設置する。液体ヘリウムで冷却し,バネ長さを変えて臨界電流の変化を測定することにより,Nb3Sn線の臨界電流に対するコンジットの捩りの効果を調べる。その結果を評価し,必要によってはサンプルの設計を見直して,2本目の実験サンプルを製作し,同様の実験を行う。次に,Nb3Sn素線の文献値を用いて,この臨界電流の変化から超伝導線の軸方向ひずみの変化量を評価し,その値を導体の構造解析の結果と比較することにより,大型導体や異なる形状の導体に本方式を適用する場合の臨界電流の変化を予測可能とする。さらに,この研究成果を実際の超伝導コイルに適用する方法について,コイル巻線方法と合わせて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度にケーブル・イン・コンジット縮小導体をバネ形状にした実験サンプルと試験装置を完成させて,実験を開始する計画であったが,サンプル製作治具と試験治具の設計の完成度を高めるための検討に時間を要したため,サンプル製作および実験に使用するクライオスタットの一部改造と整備に遅れが生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
サンプル製作には着手しており,また,実験装置の改造内容も確定している。平成29年度中に液体ヘリウム中での特性試験を実施し,本研究を完了させる。
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