タングステンイオンの電離・再結合断面積を理論的に計算し,その精度を実験的に確かめることが目的である.電離・再結合断面積の実験による測定は困難であるため,実験・理論の直接の比較による精度評価の例はほとんど存在しない.本研究では,スペクトル線強度が本来持つ電子衝突エネルギーへの依存性を打ち消す方法を考案し,これによってW62+とW63+のスペクトル線強度比と理論的に計算したW63+再結合・W62+電離断面積比との直接的な比較を可能にした.比較の結果,理論計算による電離・再結合断面積の精度は,低い電子衝突エネルギーでは高いが,高い電子衝突エネルギーでは低いことが示された.理論計算の改善が必要である.
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