リソグラフィ技術分野での露光波長の短波長化は、電離放射線域にまで達し極端紫外線(EUV)リソグラフィが新世代の半導体量産プロセスにおいて実現されようとしている。 そこで用いられるレジスト材料は、EUVの露光による電離により放射線化学反応が誘起される。そして、反応が起きていないナノサイズ領域における、現像液に対する溶解性の差異によって、微細パターンが形成される。半導体の微細化に伴い、10ナノメートルスケールの加工の実現に向け、分子サイズで生じる電離後の電荷のダイナミクスは未だ明らかにされておらず、その解明は重要な課題である。 本研究では、電子線パルスラジオリシス法による過渡吸収分光法により、芳香族分子間の過剰電荷の挙動をはじめとする放射線化学初期過程を直接観察し、EUVレジスト性能との関係性について明らかにすることが目的である。本年度は以下の研究を遂行した。 1.種々の芳香族スルホン化合物をスクリーニングし、化学増幅型レジストに添加することより、そのナノサイズの加工性能への影響を調べた。電子供与性置換基を有するフェニルスルホン化合物が、優れた解像特性の改善を示すことを明らかにした。パルスラジオリシス法を用いることによって添加剤の中間活性種(ラジカルアニオン、ラジカルカチオン)のダイナミクスを明らかにした。 2.ゾルーゲル法により合成したポリスチレン―シリカゲルハイブリッドのポリスチレン鎖中での正電荷の非局在性についてパルスラジオリシス法を用いて調べ、フェニルシランからポリスチレンへのホール移動に基づくダイマーラジカルカチオンの形成について明らかにし、さらにシリルラジカルの形成についても観察することができた。
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