研究課題/領域番号 |
15K06665
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
松浦 治明 東京都市大学, 工学部, 准教授 (70262326)
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研究分担者 |
佐藤 修彰 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70154078)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 燃料デブリ / フッ化 / 溶融塩電解 / ウラン / ジルコニウム |
研究実績の概要 |
本年度はウラン-ジルコニウム混合物のHFフッ化について、特にジルコニウムの多い組成の混合物に着目し、熱分析装置を用いてそのフッ化挙動を明らかにした。さらに、実プロセスへの適用をにらんで、前処理として還元処理、酸化処理をそれぞれ施したものについて、さらに評価を行った。その結果、ウランとジルコニウムが2:8の組成のものは酸化雰囲気・還元雰囲気処理の混合物ともに特異的にフッ化速度の遅いことが明らかとなり、ウランを選択的にフッ化させるためには、基本還元処理を行って固溶を解きフッ化させた方が効率的であるが、その組成については前処理工程でのフッ化条件の更なる検討が必要であることが明らかとなった。 一方、本年度はさらに次の工程である選択溶解について基礎的な検討に着手し、酸化ジルコニウム-フッ化ジルコニウム混合物を溶融フッ化物と一定時間共存させ、その溶解性について、固化後の試料から上部、下部よりサンプリングし、蛍光X線分析によるジルコニウムの存在量を調査することで評価した。酸化ジルコニウムの割合が増加するに従って塩の上部に移行するジルコニウムは減少したが、酸化物単独であっても比較的多量のジルコニウムが上部にも移行することが明らかとなり、また広域X線吸収微細構造による調査では、そのジルコニウムは酸化ジルコニウム単体とは若干異なる構造を有するものに変化していることがわかった。 また、溶融塩電解プロセスについては、フッ化物浴の電気化学測定を行う準備段階として、既に経験の豊富な塩化物浴中心の検討を行い、酸化物共存下でのジルコニウムの電気化学を、フッ化物を徐々に添加していきながら行った。酸化物共存下では電気化学的に2価のジルコニウムが安定に存在するが、ジルコニウム金属への還元電位は、フッ化物添加に応じた卑への遷移がそれほど起こらず、フッ化物添加によって酸化物の共存が電解に有利に働くことが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は専らフッ化プロセスに特化した取り組みのみであり、共同研究者の施設(東北大学)にての試験結果が主であったが、本年度は実験室の整備も済み、フッ化のみならず、溶融塩溶解、溶融塩電解に関するプロセスの検討に着手できた。なかでも、蛍光X線分析によりバルク量のジルコニウム濃度を評価できるようにしたこと、さらに、ジルコニウムの電気化学測定においても、既往研究と充分比較することのできるサイクリックボルタモグラムを得ることができるようになったことが大きい。従来東北大において蓄積してきたフッ化に関する情報をより詳細に組成について調査することで、固溶とフッ化の関係を明らかにし、プロセスデザインにまで踏み込むことができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
フッ化に関しては、以前東北大学においていくらか手掛けた数百グラムオーダーのバルク量フッ化の結果を、系統的に実施した熱重量測定の結果とすり合わせ、燃料デブリの出来方と組成に応じたフッ化条件の提案を行うとともに、実際そのプロセスに準じた条件によりフッ化を行い、それに見合う結果が得られるかどうか確認する。またジルコニウムの金属や各種鉄の化合物の共存状態がどのようにそのプロセスのデザインに影響するかについて予測する。 選択溶解については、ジルコニウムの溶解性についてさらに熱分析装置を用いて調査を行うとともに、一部フッ化されたウランの試料の場合の溶解性を評価する実験に東北大学において着手する。その方法としては、熱重量分析によりその溶解による熱量変化を、ポット試験後の固化塩をICPによりウランの定量を行いその溶解度を、さらに粉末X線回折により溶解後のウランの結晶状態を評価することで複合的に解析する。 溶融塩電解については、塩化物浴ベースにフッ化物を添加した場合の電気化学を調査するとともに、ジルコニウムについてはフッ化物浴ベースの電気化学測定にも着手する。ウランを用いる試験は京都大学の研究者に協力を仰ぎ進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はおおむね計画通り予算を執行したが、予定より安価に物品を調達出来た結果、残額が生じ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
年度始め直ぐに必要な消耗品等を購入することに充当する予定である。
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