研究課題/領域番号 |
15K06670
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
大井 隆夫 上智大学, 理工学部, 教授 (90168849)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水素同位体効果 / 燃料電池 / 同位体分離係数 / 換算分配関数比 / 分子軌道計算 |
研究実績の概要 |
燃料電池装置を作成した(FC-R&D社に依頼)。単セル装置が望ましいが,その場合H2消費量が少なく水素流量変化の測定が困難である。結局12セル,8 V-30 Wとした。加熱はペルチェ加熱方式,冷却はファン冷却としたが,ペルチェ冷却も検討中である。 水素同位体効果に関し,出力,温度を一定として,3系列の実験を行った。35℃で出力5 W と6.67 Wの系列,25℃で3.3 Wの系列である。S = (D/H)反応済み/(D/H)未反応で定義される水素同位体分離係数値として2.47から4.33の結果が得られた。Sの水素利用率依存性より,反応速度の同位体効果が一部関与している可能性が示唆された。 装置の問題点として3点を上げることができる。一点目は,ファン空冷では,十分な冷却ができないことである。来年度以降ペルチェ冷却も検討する予定である。二点目は反応場(Pt触媒上)での温度が正確に測定できていない可能性があることである。すなわち,反応場の温度が必ずしもセル温度と一致しない可能性がある。反応時間を十分取り定常状態が達成されてからサンプリングすることでこの問題は解決できると考える。三点目は,水蒸気が水素ガスチューブ内で凝縮し,通路を塞いでしまうことである。水素流路の一部のチューブを太いものに変え,その部分に液体の水をトラップすることとした。本質的な解決になっていないが,対処療法としては機能している。 理論的側面として,電解質膜および白金触媒上での水素の換算分配関数比の分子軌道計算を行った。前者では,C5F11-SO3--(H3O+)(H2O)n (n = 9-48)を考え,構造最適化,振動解析を行い,得られた振動数より,換算分配関数比を計算した。後者に関しては,白金表面をPt19で表現した計算を行った。計算レベルはいずれも,b3lyp/lanl2dzである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画調書で予定していた,1) 装置の試作,2) 実際の水素同位体効果の測定,3) 分子軌道法によるは金触媒上での水素同位体交換定数の計算,の三点について,いずれも予定通りの進捗をみた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には計画調書通りであるが,平成28年度は,酸素極における酸素同位体効果を測定することとした。これは,O2の酸素同位体比を測定できるめどがついたためである。実験方法は水素の場合と同様である。違いは,供給水素と廃棄水素の代わりに供給酸素と廃棄酸素をサンプリングし,酸素同位体比を測定することである。 並行して,白金触媒上での酸素化学種の換算分配関数比の分子軌道計算を行う。水素の場合同様,白金表面をPt19で近似し,計算レベルはb3lyp/lanl2dzとする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
燃料電池実験装置を予想より安く作成することができた。また,アルバイト料を予定より安く抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は酸素同位体比を測定する予定であるが,測定料が水素の場合に比べだいぶ高額となる可能性が高い。次年度使用額(繰越金)はそのために有効に使用する予定である。
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