本年度は,実験的に観測されたカソードにおける酸素同位体効果(IE)を理論的に説明するため,白金触媒上で想定される酸素化学種の18O/16O換算分配関数比(rpfr)の計算を行った。以下に3年間の研究全体をまとめる。 アノードでの水素IEに関し,当初の1セルから13セルの燃料電池に変更して実験を行い,多くの貴重なデータを集積した。理論面では,白金触媒(Pt19クラスターで近似)に吸着した水素化学種のrpfr計算を行った。 CH3Fにおける水素,炭素蒸気圧IEの理論的説明を試みた。CH3FはCH3FがCD3Fより,13CH3Fが12CH3Fより高い蒸気圧を持つという特徴を示すが,それらの温度依存性が隣接分子のC-H結合とF-C結合の相互作用が温度依存するためであることを明らかにした。 カソードにおける酸素IEを実測した。燃料電池稼働時に,反応した酸素ガスと排出される酸素ガスの18O/16O同位体比の比として定義される分離係数Sを算出した。S値は1.0083から1.0306の範囲であり,カソードにおけるO2 + 4e- + 4H+ → 2H2Oにおいて,軽い16Oの方がこの反応を起こしやすいことが分かった。燃料電池における酸素IEを定量的に測定したのは,おそらく本研究が世界初である。実験結果の平衡論による定量的な説明の試みとして,白金触媒に吸着した酸素化学種の18O/16O rpfrの計算を行った。白金触媒表面に様々な酸素化学種を配置し構造最適化を行った上で,振動解析をし,rpfrを計算した。細かい解析は今後の課題であるが,触媒表面に吸着したO2が解離するためには,複数の水素原子,イオンが必要であることが分かった。 本研究により,燃料電池がかなり大きな水素,酸素IEを示すことが明らかとなり,燃料電池を稼働しつつ水素,酸素同位体を濃縮する可能性を示すことができた。
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