研究課題/領域番号 |
15K06671
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
野上 雅伸 近畿大学, 理工学部, 准教授 (50415866)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海水ウラン / 吸着剤 / 海水淡水化プラント / バイファンクション |
研究実績の概要 |
本研究は、福島第一原子力発電所の事故後も世界的な戦略的物資としての地位が揺らいでいないウランを、我が国が島国であることのメリットを生かし、海水から捕集可能な新規吸着剤を開発することを目的とする。しかも、従来の同様の研究とは異なり、海水淡水化プラントにおいて海水を淡水化した後に残る高塩分濃度水溶液に適用可能な吸着剤の開発を目指す。吸着剤の候補として、海水からのウラン回収で実績があるが、ウラン(VI)の選択性の面でやや問題があるジヒドロキシホスホノ樹脂(RCSPO)に、中性水溶液条件での特異的かつ非常に高いウラン(VI)選択性を我々が見出したトリホスフィントリオキシド(TPT)を含浸させた、二種類の交換基を有する「バイファンクション」吸着剤(TPT - RCSPO)について検討する。 本年度は、TPTの一つであるPPTPTを有する吸着剤(PPTPT - RCSPO)に対し、最適な吸着条件探索の観点から、種々の濃度のNaCl及びHCl水溶液を用いて金属イオンに対する吸着データを取得すると共に、PPTPTの最適含浸率の検討を行った。併せて、PPTPT - RCSPO吸着剤の吸着機構の解明に資するため、RCSPOの交換基と同様の化学構造を持つ化合物(IPPA)を合成し、NaCl水溶液中でのPPTPT, IPPA, Nd(III) 3成分系の分光学的測定を行った。 その結果、PPTPTの含浸率は25wt%程度が最適であることが示唆された。PPTPT, IPPA, Nd(III) 3成分系の検討では、予想通りPPTPTとIPPAの双方に含まれるホスホリル基(P=O)の酸素原子が共にNd(III)と結合していることが示され、バイファンクションの効果が現れた。またNaCl(塩)とHCl(酸)水溶液では、後者の方が金属イオン吸着におけるPPTPTの影響がより顕著であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施項目に対し、結果を出せているため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では含浸吸着剤の検討を行っており、カラムによる処理を想定している。含浸吸着剤のカラム処理においては、含浸した抽出剤の運転中での浸出が大なり小なり避けられない。これを改善するために、将来的には現行のPPTPTより疎水性の高い化合物の適用が不可欠になる可能性が高い。これは純粋な有機合成化学の範疇であり、今後専門家のご指導を仰ぎながら進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺憾ながら、本年度の出張等の支出に係る手続きが年度内に間に合わなかった。次年度は余裕を持って手続きを進めたい。
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次年度使用額の使用計画 |
主に成果発表のための学会参加旅費、ウラン試験(於:東京)実施のための出張旅費、試薬購入用物品費で、予定の直接経費は支出できる見込みである。
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