研究課題/領域番号 |
15K06672
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
鈴土 知明 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (60414538)
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研究分担者 |
長谷川 晃 東北大学, 工学研究科, 教授 (80241545)
都留 智仁 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (80455295)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タングステン / レニウム / オスミウム / 照射誘起欠陥 / 格子間原子 |
研究実績の概要 |
タングステンを照射すると核変換原子としてレニウムやオスミウムが生成され、それが凝集・析出し材料の機械的性質の変化をもたらす。凝集するにはレニウムやオスミウムが移動しなければならないが、その移動が結晶中でどのようなパスで起こるのかが知られていなかった。研究開始時点で申請者らは、第一原理計算によってレニウムおよびオスミウムがタングステンと混合ダンベルを形成しその形態を維持したまま拡散することを予測していた。研究開始年度である昨年度は、キネティックモンテカルロ(KMC)コードを作成し、上記第一原理計算結果を入力パラメータとしてレニウムおよびオスミウムのタングステンとの混合ダンベルがその場で回転する頻度が第一近接位置へのジャンプの頻度に比べて有意に高いため、ほぼあらゆる方向に移動することができ3次元運動することがわかった。一方、タングステンにレニウムやオスミウムを添加すると照射スウェリングが抑えられるという実験結果が多数報告されており、そのメカニズムは解明されていない。照射スウェリングは格子間原子の運動次元に大きく影響されることが知られており、少なくとも観測された照射スウェリング抑制の一つの原因は、格子間原子が純タングステンでは1次元であったのが、合金化によって運動が3次元に変化したせいであると考えられ、当該年度はその仮説をKMCコードで検討した。その結果、格子間原子運動の3次元化によって空孔との再結合率が上昇し、照射でできた点欠陥の数密度が減ることが分かり、その仮説が正しいと判断できる結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タングステン材中に照射によってできる空孔型欠陥は、材料の機械特性の劣化を促進するほか、水素同位体の吸蔵が増やすのでプラズマ対抗材料として好ましくない。これまで核変換元素であるレニウムやオスミウムが照射効果を抑制する効果が報告されていたが、そのメカニズムは知られていなかった。当該年度ではこのメカニズム解明を予定していた。これまでの第一原理計算とキネティックモンテカルロ法による計算結果と実験データの詳細な検討から、レニウムやオスミウムの添加で格子間原子の拡散が1次元運動から3次元運動の変化することが原因である確度が非常に高いことがわかり、当初の予定通り、メカニズム解明に関して大きな進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、核変換で生成されるレニウムやオスミウムだけでなく、様々な溶質元素、例えばバナジウム、クロム、チタンなどの効果を研究していき、プラズマ対抗材料に最も理想的な合金を探していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験試料の購入が遅れていると同時に、旅費等で差額が出たため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験試料の購入や国内旅費等に適切に執行していく。
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