研究課題/領域番号 |
15K06676
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
高松 邦吉 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 高温ガス炉水素・熱利用研究センター, 研究副主幹 (70414547)
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研究分担者 |
守田 幸路 九州大学, 工学研究院, 教授 (40311849)
松元 達也 九州大学, 工学研究院, 助教 (90325514)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 格納容器 / 冷却設備 / 受動的安全性 / 輻射 / 自然対流 / 高温ガス炉 / HTTR / HTGR |
研究実績の概要 |
福島第一原子力発電所事故(以下、福島事故)後、深層防護の観点から炉心損傷の防止対策が重要になった。安全上優れた特性を有する冷却設備に関する研究は、極めて重要なテーマである。本研究では、動的機器および非常用電源等を必要とせず、福島事故のようにヒートシンクを喪失することもなく、事故時の崩壊熱を受動的に除去できる新しい冷却設備(以下、冷却設備)を提案する。また、自然対流よりも、できるだけ輻射を用いて除熱ができるような冷却設備を開発する。さらに、想定される事故を超える異常事象が生じても対処できるよう、作動範囲が広く除熱性能に優れた信頼性の高い冷却設備を開発する。本冷却設備の概念の成立性を解析的および実験的に示し、通常運転時に原子炉圧力容器からの放出熱(熱損失)を除去可能であること、事故時に崩壊熱を除去可能であることを明らかにする。 平成28年度は、(1)考案した本冷却設備の有用性を実験的に実証するため、詳細解析で求められた最適な曲線形状を持つ実機の冷却設備を縮小したスケールモデル(伝熱試験装置)の製作を完了した。また、(2)製作した伝熱試験装置内にある模擬原子炉圧力容器へ熱を加えることで、伝熱試験装置の熱流動特性を測定し、輻射による除熱効果を定量的に明示することができた。さらに、(3)実機に対する伝熱試験装置の縮小率で伝熱試験装置の試験条件をまとめ、実機の輻射及び自然対流を同時に再現するために必要な冷媒の加圧量を示す式を明らかにすることができた。 本研究で提案した冷却設備は、全く新しい形状を採用しているため、受動的安全性の研究分野に対し、新たな知見を提供するものとなる。また、学会発表については研究継続期間を通して積極的に報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究実施計画に沿って研究を実施した結果、輻射による除熱効果を定量的に示すことで、通常運転時に原子炉圧力容器からの放出熱(熱損失)を、事故時に崩壊熱を除去可能な熱伝達機構として活用できることを実験的に明らかにできた。崩壊熱は指数関数的に減少するため、非常用電源等が必要なくなり、長期間(無限時間)に渡って受動的な除熱が可能となる。 (1)受動的安全性を持つ炉容器冷却設備(以下、冷却設備)の成立性を実験的に示すために、スケールモデル(伝熱試験装置)の製作を完了した。(2)伝熱試験装置を用いて、本冷却設備の熱流動特性を実験的に詳細に確認することに成功した。(3)実機に対する伝熱試験装置の縮小率で伝熱試験装置の試験条件をまとめ、実機の輻射及び自然対流を同時に再現できる冷媒の加圧量を決める式を提案できた。 それらの成果の一部を、日本原子力学会およびAnnals of Nuclear Energyで発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に実施した実験結果を参考に解析モデルを改良し、実機の高温ガス炉に冷却設備を組み込んだ概念を提案する。また、本冷却設備の概念が高温ガス炉以外の他の炉型へ応用可能であるか検討する。その際、典型的な過酷事故事象を緩和する効果があるか検討する。さらに、平成28年度に実施した実験結果を参考にスケールモデル(伝熱試験装置)の改造も行い、新たな実験データを取得する。最後に、高温ガス炉の実機スケールでの試験研究について検討する。学会発表については、平成29年度も積極的に報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度において、ソフトウェアを購入する予定であったが、購入を予定していたバージョンに対して、バージョンアップが発生し、想定よりも価格が上昇したため、平成28年度の購入を見送ることとし、次年度使用額が発生することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に発生した次年度使用額と平成29年度配分額とを合わせて、熱流動現象の詳細解析、スケールモデルの設計に係る消耗品費及び研究成果発表に係る経費(学会参加費、論文投稿料、旅費等)に使用する計画である。
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