本研究では、積雪の断熱効果によって年間を通じ安定した温度が得られる地温と、冬期の外気温との温度差(約30℃)を利用した熱電素子(ペルチェ素子)による独立電源型の発電システムを開発した。具体的には、(1)温度差発電装置の開発に必要な気象に関する基礎データの取得、(2)実用的な発電能力を有する実験装置の試作、(3)厳冬期におけるエネルギー地産地消のための実証実験(発電性能・耐寒性能)を実施した。3年間の研究の結果、積層ペルチェユニットを断熱加工と、ヒートパイプによる熱の輸送を組み合わせることにより、温度差に応じ直線的に起電力を得ることが可能なことが分かった。特に無風で放射冷却現象が顕著な快晴の日は出力が大きいことを確認した。しかしながら、いくつかの課題が生じ、その解決策が必要となった。(1)当初目標にしていた吹雪時は外気温が高いため、LED点灯に適した出力が得られないことから、吹雪時の風速を利用した小型風力発電との組み合わせ(ハイブリッド発電)を検討した。(2)日中の気温上昇時は大気側のヒートパイプが加熱されるために十分な温度差が構成されないため、これを解決するために遮光板を導入(積雪の断熱効果を妨げないよう通風機能も持たせる)した。 本研究で得られた成果の一部として、同じ仕組みで構成した積層ペルチェユニットを使用し、室内の暖房の余熱を利用した温度差発電装置を研究室入り口に設置し、冬期間の実証実験を行った。結果として、これまで一般的に用いられてきた温度差発電に比べ、少ない温度差でありながらLEDを連続点灯できることを示すことができた。また、この研究の一環として北見工業大学敷地内で積雪断面観測を実施し、霜系の雪質が発達する時期が温度差発電に適していることを確認した。
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