研究課題/領域番号 |
15K06682
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
汲田 幹夫 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (60262557)
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研究分担者 |
児玉 昭雄 金沢大学, 機械工学系, 教授 (30274690)
東 秀憲 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (40294889)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | メソポーラスシリカ吸着材 / 水蒸気吸着 / 吸着冷凍 / 複合構造体 |
研究実績の概要 |
熱駆動型の吸着式冷凍機の小型高性能化を図るためには,その主要素である固体吸着材が充填された吸着熱交換器内の伝熱促進が不可避である。本研究では,水冷媒系吸着式冷凍機の新たな蓄熱体として,優れた水蒸気吸脱着性と熱伝導性を併せ持ち,高度の耐久性を備えたメソポーラスシリカ(MPS)/アルミニウム複合構造体を提案し,その作製とこれを組み込む吸着冷凍システムの冷熱出力密度の評価,検証を目的としている。 今年度は,市販の球形メソポーラスシリカ粒子(平均粒径0.36μm,平均細孔径2.0nm)を,シランカップリング剤を導入して,金属アルミニウムの表面に化学的に固定化する手法の確立について検討を行い,以下の知見を得た。①シランカップリング剤を介して,金属アルミニウムとMPS粒子を化学的に結合させるための前処理として,リン酸浴陽極酸化法によってアルミニウム平板表面に極薄の酸化皮膜を形成させた。その結果,形成される酸化皮膜の厚みは印加電圧によって制御可能で,100Vの印加条件で最も薄い200nmの酸化皮膜が得られる。②アルミナ皮膜-MPS粒子間及びMPS粒子-粒子間の架橋剤として3-chloropropyltrimethoxysilane(CPTMS)を選定し,CPTMS/水/エタノール混合液とMPS粒子の分散液中に,表面処理を施したアルミニウム平板を浸漬させてMPS/アルミニウム複合構造体の作製を試みた。その結果,本手法により,酸化アルミニウム層の表面に厚み20μm程度の強固なMPS粒子層を形成させることができ,それはCPTMS量及びMPS粒子量,浸漬回数と時間などの操作条件に大きく依存する。また,作製したMPS/アルミニウム複合構造体は水蒸気吸着能を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吸着式冷凍機の新たな蓄熱体として提案するメソポーラスシリカ(MPS)/アルミニウム複合構造体の作製では,シランカップリング剤を用いてアルミニウム基材の表面にMPS粒子層を形成させる。そのためには,アルミニウムの表面に水酸基の導入が必要となり,本研究では,リン酸浴陽極酸化法を採用して,その表面にアルミナ皮膜を形成させた。一方で,本複合構造体の熱伝導性を高度に保持するには,このアルミナ層を可能な限り薄くする必要があり,これまでに最小皮膜厚み200nmを達成した。 MPS粒子層の形成では,陽極酸化処理で生成させたアルミナ層表面-MPS粒子間及びMPS粒子-粒子間にシランカップリング剤による架橋を形成させることで強固な粒子層が得られると考えた。そこで,多くの候補カップリング剤の中から,文献調査と予備実験に基づいて3-chloropropyltrimethoxysilane(CPTMS)を架橋剤に選定し,CPTMS/水/エタノール混合溶液にMPS粒子を加えた分散液を調製して,ここに表面処理を施したアルミニウム平板を浸漬させることで,厚み20μm程度のMPS粒子層を平板表面に形成させることに成功した。成膜量や成膜状態は,分散液組成並びに浸漬条件に大きく依存すること,MPS粒子層は機械的にも強固であること,そして,水蒸気吸着能を有していることを確認した。現時点で最適作製条件の確立には至っていないが,シランカップリング剤を利用したMPS/アルミニウム複合構造体の作製法が取得できたことから,本研究の進展はおおむね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果を踏まえて,今後は以下に示すように本研究を推進する予定である。 まず,現在検討を進めている市販のメソポーラスシリカ(MPS)粒子を用いたMPS/アルミニウム複合体について,MPS粒子層及び細孔の構造特性,水蒸気吸着特性,伝熱特性等を系統的に評価することで,その最適作製条件を確立する。また,吸着冷凍サイクル操作での水蒸気吸着に適した細孔構造を有するMPS粒子の合成にも取り組み,市販MPSと同様に,シランカップリング剤を導入してアルミニウム基材との複合化を行う。 MPS/アルミニウム複合構造体の吸着式冷凍機への適用性を検証するためには,複合構造体の水蒸気吸着と熱移動に関する動的特性の把握が重要となる。そこで,複合構造体を用いた水蒸気吸着実験に加え,数値モデルに基づく熱・物質移動解析を実施する。得られる結果に基づいて,MPS/アルミニウム複合構造体が最大限機能する小型吸着熱交換器を試作し,一般的な吸着冷凍操作条件における冷熱生成実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
金属アルミニウムの前処理液,陽極酸化処理のための電解液及びシランカップリング剤などに用いる各種試薬,試料アルミニウム平板等の消耗品に要する費用が,当初の見込みより少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
「次年度使用額14,780円」と翌年度分の請求助成金(研究分担者分)を合わせた経費は,アルミニウムの表面処理実験やシランカップリング剤によるメソポーラスシリカ粒子層の形成実験,さらには,メソポーラスシリカの合成実験に必要な消耗品の購入に充当する予定である。
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