研究課題/領域番号 |
15K06683
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 徹 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90360578)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 境界要素法 / アイソジオメトリック解析 / 周期多重極法 |
研究実績の概要 |
■内容 研究実施計画に基づき、高速・高精度境界要素法(BEM)の開発を行った。具体的には、アイソジオメトリック要素(=B-splineを形状関数および補間関数とする一種のアイソパラメトリック要素)に基づくBEM(以下、IGBEM)を開発した。開発したIGBEMは研究代表者の先行研究をベースとしているが、本研究では対象とする問題を1周期境界値問題とした点、また、高速化のために周期多重極法を採用した点が新しい。現実の太陽電池を周期構造(=無限大モデル)として扱うことは近似であるが、太陽電池が厚さ方向に対して面方向に十分長いことを考慮すると妥当である。かつ、光閉じ込め(それによって、薄型シリコンの高効率化を果たすことが本研究の目標)の原理として本研究が注目する表面プラズモンを効率的に励起するためには、太陽電池が周期構造を有していることが必要条件であるが、現実に即して有限周期を扱うと、外乱(例えば、エッジ効果)を誘起し得るために、かえって解析結果の見通し(したがっては、今後検討する太陽電池の効率評価)を悪くすると考えられる。提案する周期高速IGBEMの妥当性は、厳密解および低次要素に基づくBEMとの比較により検証した。他方、3次元(周期)問題を扱うための準備にも取り掛かり、BEMの高速化(多重極法の効率化、前処理技法の開発など)についても研究を行った。 ■意義と重要性 本高速IGBEMの開発は、H28年度に実施予定の形状最適設計のソルバとして必要不可欠な道具となるばかりでなく、計算工学的に意義深いと言える。すなわち、滑らから開曲線(周期境界値問題において主として扱う境界表現)に注目したアイソジオメトリック解析手法は新規であり、また、高次要素に注目した周期多重極法に関する研究例は他にはない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度はプラズモニクスのための高速・高精度境界要素法の開発を主目的としており、アイソジオメトリック要素および高速多重極法の導入、ならびに、誘電関数をDrudeモデルおよび実験データから補間によって取り扱えるようにできた点によって、その目的は達せられたと考えられる。研究計画の時点では周期問題を取り扱う余地はなかったが、研究実施後に有限周期では数値解の解釈が難しいケースもあることが判明して、周期問題を扱うこととなった。概要でも述べたように、モデルを周期化することは妥当な近似であり、数値解析の側面では新規な手法を提案できることになった点では有意義である。この成果は、当初計画していなかった3次元問題への挑戦の動機となっており、関連する高速化技法の開発(M2L変換および前処理の効率化)と相俟って、3次元2周期問題の実施も視野に入れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、太陽電池(空気中に置かれたシリコン層と金属膜層からなる)が太陽光を効率的に閉じ込める(したがって発電効率が高まる)ことができるような電池形状の探索を行う。具体的には,太陽電池内部のエネルギを最大化するような2次元周期構造体の形状最適設計問題を解く。当問題の定式化(目的関数の設定、随伴変数の導入等)を行い、形状微分の導出を行う。形状微分を(数値的に)評価するためには、随伴問題および主問題を解く必要があるが、そのソルバとして、H27年度に開発した高速・高精度BEM(アイソジオメトリック高速多重極BEM)を用いる。形状微分を評価する手続き(サブルーチン)を完成した後、それを非線形最適化問題のソルバ(現時点ではいくつかの候補があるが、たとえば、フリーソフトのIPOPT)に組み合わせることで、本形状最適設計問題を解くためのシステムが構築できる。当該システムの構築は9月は目処として、システムの検証を次いで行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主たる設備備品であるワークステーションが、販売業者と掛け合ったところ、安価に購入できたことが要因。また、H28年度以降は研究成果発表を活発化するための経費(旅費)を勘案して、支出を抑える(例えば、大学院生に対する業務依頼(計算機の管理・運営、資料整理等)のための人件費)ように留意した点も一因である。
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次年度使用額の使用計画 |
発生した使用額はH28年度の旅費および人件費として使用する予定。
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