研究課題/領域番号 |
15K06685
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田中 義和 広島大学, 工学研究院, 准教授 (00335704)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境発電 / 振動発電 / 圧電材料 / 自動車 |
研究実績の概要 |
近年、再生可能エネルギー発電、環境発電もしくはエネルギーハーベスティングをキーワードとした研究が活発化してきている。その背景には、化石燃料の枯渇に対する懸念、二酸化炭素排出による地球温暖化対策、純粋な技術革新への意識、がある。再生可能エネルギーの代表としては、周知のように、太陽光発電、風力発電が挙げられる。 一方、新しい発電技術として、熱電変換材料、磁歪材料、圧電材料などの機能性材料を用いた発電技術の研究開発が2000年代前半から活発化してきている。これらの技術は、現状において、太陽光発電や風力発電と比べ、1つ1つの発電装置から獲得できる電力は小さいため、環境発電もしくはエネルギーハーベスティングと呼ばれている。しかし、自動車からスマートグリットとまで幅広く活用できる技術と期待され、さまざまなアプリケーションの研究開発が、欧米を中心に進められている。 環境発電に活用できる振動エネルギーは身近に多種多様に存在している。風力エネルギー、海洋エネルギー、工作機械の振動、自動車のエンジン振動など、さまざまなものが考えられる。特に自動車エンジンの振動エネルギーは大きく、この振動エネルギーを活用できる技術を開発することは、自動車メーカーにとって非常に魅力的であると想定できる。そこで、本研究課題では、代表者らが提案している柔軟発電体とエンジン振動を組み合わせた環境発電技術の開発を行う。 平成28年度は、「理論特性評価方法を用いたパラメータスタディ」、「実機を用いた発電検証実験および非線形振動発電の検討」について検討を行った。 その成果として、査読付論文(英語)3編、査読付き国際会議プロシーディング1編、査読無し国内講演論文5編、であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画と照らし合わせて、本研究課題の進歩状況を自己点検すると、おおむね順調に進歩していると考えている。平成28年度の研究計画をおおむね達成しており、平成28年度以降の研究計画を実施する上での基盤が構築できたと考えている。 平成28年度は、「理論特性評価方法を用いたパラメータスタディ」、「実機を用いた発電検証実験および非線形振動発電の検討」について検討を行った。 「理論特性評価方法を用いたパラメータスタディ」では、開発した理論特性評価方法の妥当性の検証のために、振動試験機を用いた強制振動実験を行った。具体的には、様々な支持方式におけるパネル型柔軟発電体の理論特性評価方法の開発、インピーダンスマッチング評価方法の開発、を行った。これにより、パネル型柔軟発電体の振動と発電特性を評価できるようになった。 また、非線形振動発電の検討の一環として、発電帯域を広域化するためにバネで複数の柔軟発電体を連結させた発電システムについて検討を行った。実験により、バネで複数の柔軟発電体を連結させた発電システムの効果について検討を行った。さらに、実験で得られた計測結果を再現できる理論発電特性評価方法を開発し、その妥当性を実験結果と比較することで確認した。これにより、バネで複数の柔軟発電体を連結させた発電システムを設計できるようになったといえる。 以上の成果として、査読付論文(英語)3編、査読付き国際会議プロシーディング1編、査読無し国内講演論文5編、であった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の成果と研究計画に基づき、研究を進展させる。研究計画では、平成28年度以降の研究項目は、「理論特性評価方法を用いたパラメータスタディ」、「実機を用いた発電検証実験および非線形振動発電の検討」、「柔軟発電体の疲労特性の検討」であり、平成29年度はおもに「実機を用いた発電検証実験および非線形振動発電の検討」および「柔軟発電体の疲労特性の検討」、について研究を行う。「実機を用いた発電検証実験および非線形振動発電の検討」では、平成28年度に開発した特性評価方法を用いて、パラメータスタディを行い、設置場所の振動環境を考慮した柔軟発電体の設計を行う。設置場所としては、エンジンの側面、エンジンを支えるマウント周辺を想定している。したがって、設置可能なスペースが限られてくる。そこで、設置可能なスペースおよび設置形態を考慮して、最大の電力出力が得られる柔軟発電体を設計し、振動試験機もしくは実機を用いた確認実験を行う。また、発電体に磁石などを付加した非線形振動発電、移動できる錘を用いたパラメトリック励振についても検討を行う。「柔軟発電体の疲労特性の検討」では、これまでに製作した柔軟発電体の長時間発電実験および曲げ疲労試験を行い、柔軟発電体の疲労特性について検討を行う。
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