研究課題
本研究では仮説「同じPcdhを発現するニューロン同士で神経回路を作る」の検証を行い、本仮説を支持する結果を得た。具体的な結果を以下に記す。小脳のほぼ全てのニューロンタイプにおいてPcdhgを欠損させたマウス(小脳Pcdh欠損マウス)において以下の知見を得た。(a)運動機能の低下、(b)小脳サイズの減少、(c)小脳の抑制性ニューロン数の減少。すなわち、小脳におけるPcdhgは、抑制性ニューロン数や小脳サイズを調節し、それを通じて運動学習の適正化に関わることが示唆された。そこで、抑制性ニューロン数の調節メカニズムを検討した。まず、小脳において、どのニューロン種が如何ほど減少しているか?を発生を追って組織学的に解析した。その結果、分子層インターニューロン密度(ステレイト細胞、バスケット細胞共に)が生後1週以降に50%減少することが明らかとなった。さらに本減少に関わる分子メカニズムとして、アポトーシスの亢進が示唆された。また、この過程で抑制性ニューロン数を簡便に定量する方法(VGAT-tdTomatoマウス)を開発し、これを論文発表した。最終年度は、抑制性ニューロン数や小脳サイズの調節におけるアポトーシスの関与を直接的に調べた。そのため、小脳Pcdh欠損マウスにおいてアポトーシス制御因子Baxを欠損させる(小脳Pcdhg&Bax二重欠損マウス)ことでアポトーシスを阻害した。その結果、本マウスの小脳は野生型マウスと同様のサイズであり、運動学習能も大幅に改善していた。本結果はPcdhgはアポトーシス抑制を通じて小脳抑制性ニューロンの数を調節していることを示している。興味深いことに、小脳Pcdhg&Bax二重欠損マウスは、運動学習の固定化が阻害されていた。本結果は、Pcdhgが学習の固定化に関わることを示す初めての結果である。
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