研究課題/領域番号 |
15K06699
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 大介 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (80588377)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CREB / キノコ体 / 記憶 |
研究実績の概要 |
ショウジョウバエの記憶中枢であるキノコ体をCREB活性のレポーターによってラベルし、レポーター陽性・陰性細胞の嗅覚記憶における役割を詳細に調べた。レポーター陽性細胞は罰記憶の形成・維持・読み出しの全てのステップに必須であり、陰性細胞は報酬記憶の形成・維持・読み出しに必須であることがわかった。また、レポーター陽性細胞を活性化すると陰性細胞を阻害したときと同様、報酬記憶に阻害的に働き、反対にレポーター陰性細胞を活性化すると罰記憶を阻害することが明らかになった。 さらに、レポーター陽性細胞を活性化するだけで罰記憶が形成され、不活性化すると報酬記憶が形成される。逆に、レポーター陰性細胞を活性化すると報酬記憶が形成され、不活性化すると罰記憶が形成されることを見出した。 これらの結果から、レポーター陽性・陰性キノコ体細胞は匂いの価値をコードするための双方向スイッチであり、両者はお互いに機能阻害し合う性質を持つことがわかった。両者の活性化バランスが記憶のベースとなるCS(conditioned stimulus、匂い)に対する価値変化のコードとなることが示唆された。 ライブイメージングにより、匂い刺激に対するこれらの細胞のカルシウム動態を測定したところ、レポーター陽性細胞は匂いによって活性化されるのに対し、レポーター陰性細胞は匂いによって活動が抑制されることが明らかになった。この結果からも両者は正反対の機能を持つことが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではカルシウムイメージングの実験を中心に進める予定であったが、蛍光プローブの感度の問題により、思うようにデータの取得ができなかった。そこで行動実験のデータを集中的に取りつつ、イメージングは共同研究という形でプローブの選定・測定条件の構築から取り組むこととした。イメージングのデータはまだ取得の余地が多いが、行動実験に関しては非常に多くの知見が得られ、論文投稿に向けて準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も学習前・学習中・学習後のレポーター陽性・陰性細胞の動態を見ることを最大の課題としていくが、顕微鏡下の記憶形成の系よりもオプトジェネティクスの系で神経接続を見ていくほうが容易であることがわかったので併せてデータを取得していく。また、行動実験の結果から新たな方向性も見えてきたのでそちらも進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存のハエ系統で論文投稿することとなり、予定よりハエ系統の作成が少なく済んだこともあって本年度の予算使徒が少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次の論文投稿に向けて27年度の予定通りハエ系統の作成を発注する。その中からイメージングにも転用可能なハエをスクリーニングする。
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