研究課題
霊長類は、興味あるものが空間内に現れると、そこへ視線を向けて網膜の中心窩に捉える。この時、他の対象は無視する。これは注意が注視として外的に発現したものであり、注視と関連して不要な眼球運動を抑制する興味ある部位を、大脳前頭眼野において我々は見い出した。本研究は、この部位の投射先を同定して注視発現の機序を調べ、注視システムを明らかにすることを目的とする。解析は、サルの前頭眼野と中脳の上丘及び脳幹において電気生理学的・解剖学的手法を総合して進めた。平成29年度は、訓練したサルにおいて、前頭眼野の微少電流刺激により誘発される眼球運動と頭部運動の関係について解析を進めた。我々は、頭部固定下に前頭眼野刺激を行い、眼球運動と頭部トルクの同時記録を行った。この方法は、頭部を固定しているため、前庭動眼反射から分離して眼球運動を解析することが可能となった。まず前年度までの結果から、大きな振幅の急速眼球運動(サッケード)が誘発される前頭眼野内側部の刺激により、対側向きサッケードと共に対側向き頭部トルクが誘発されることがわかった。さらに、微少電流刺激により対側向き頭部トルクと共に同側向きの遅い眼球運動が誘発される部位が、前頭眼野内側後部に見出された。この眼球運動は頭部トルクと潜時がほぼ等しく、対称的な特性を示すことから、頭部の運動活動のcorollary discharge(随伴発射)により生じたことが示唆される(Izawa and Suzuki, 2018)。
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Journal of Neurophysiology
巻: In press ページ: In press
10.1152/jn.00577.2017