研究課題/領域番号 |
15K06703
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
杉内 友理子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (30251523)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 輻輳 / 開散 / 核上性細胞 / 上丘 |
研究実績の概要 |
立体視が可能になるためには、視覚対象が,網膜の中心窩で捉えられる必要があり、これには両眼の視線が一点で交わるように視線を制御する輻輳性眼球運動が必須となる。しかし輻輳性眼球運動の出力神経機構に関する知見は乏しい。本研究は、上丘の頭側部に、下位輻輳中枢としての役割があることを証明し、そこから内直筋および外直筋に至る脳幹出力神経回路を明らかにすることを目的としている。 上丘は、急速眼球運動の中枢であることが知られ、我々もこれまで、その神経回路を解析してきた。これまでに報告された研究では,上丘には運動性地図が存在し、頭側部ほど小さいサッケードの生成に関与することが知られている。Guittonらは上丘頭側部に、輻輳性眼球運動を誘発する領域があることを示唆し、大塚らは上丘頭側部が近見反射の中枢でもあることを示唆するデータを報告したが,上丘に輻輳中枢が存在することを直接証明した報告はない。そこで本研究では、麻酔下のネコにおいて、上丘の頭側部を中心に系統的に微小電流刺激を行い,対側眼の内直筋運動細胞に興奮性入力を及ぼす部位を解析した。通常、上丘の電気刺激は、反対側へのサッケードを誘発するので、対側の内直筋には抑制が生じてしまい、内転が生じないことが分かった。すなわち、輻輳成分である内直筋の興奮はこの反応にマスクされており、検出することができないため、これまで研究が進まなかったのである。そこで、この反応を除外するため、中脳と脳幹の外転神経核との間の傍正中を切断して、上丘からのサッケードの出力路を切断した標本を作成した。この標本で、上丘の系統的な電気刺激によるマッピングを行い、更に、内直筋運動細胞から細胞内記録を行い、興奮性シナプス後電位を記録して、いくつのシナプスを経由する経路であるかを解析している。現在、この投射が直接でないことが明らかになり、その中継核の細胞を同定中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
輻輳性眼球運動の神経回路の解析の基盤となる、上丘内における輻輳性眼球運動に関わる機能の局在を同定できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
同定された上丘の輻輳関連領域について、その入出力関係を、電気生理学的および解剖学的に解析し、輻輳および開散に関わる神経経路を明らかにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に、急遽デジタルカメラが故障し、その経費を捻出するため、余裕を見て平成28年度にくりこしたが、デジタルカメラを購入してもなお余裕があった。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は、電気生理学的に同定された経路の解剖学的な裏付けを得るための実験として免疫組織化学的染色などを行うため、消耗品費が多くなる予定である。また、成果発表のための経費も必要になる予定である。
|