研究課題/領域番号 |
15K06707
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大河原 美静 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (80589606)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経筋接合部 / 増殖因子 / シグナル伝達経路 |
研究実績の概要 |
神経筋接合部(NMJ)は運動神経と筋肉細胞を結ぶシナプスで、その形態形成は運動神経が分泌するagrinの受容体であるLRP4/MuSKとその下流のシグナル伝達経路が重要であることが知られている。本研究はNMJとagrin/LRP4/MuSKに対する分泌型増殖因子の機能を知る事を目標にし、増殖因子またはそれにより活性化されるシグナル伝達経路がNMJの形態形成にどのようにかかわるのかを検討している。昨年までにヒト胎児腎細胞HEK293にagrin、LRP4、MuSKを発現させると活性化されるATF2-Lucレポーターを指標に、候補となる7つの分泌型増殖因子BMP、IGF、TGFbeta、TNF、hedgehog、VEGF、notchがagrin/LRP4/MuSKシグナルにどのように影響しているかを検討していた。その結果TNF、VEGF、notchについてはこの因子の下流のシグナルを化合物で阻害しても、レポーターの活性化度合いに変化はなかったことを報告した。そこで、それ以外の増殖因子(BMP、IGF、TGFbeta、hedgehog)の下流のシグナルを化合物で阻害し、筋肉細胞においてAgrinが誘導するアセチルコリン受容体の集積の状態を観察した。その結果、IGFとhedgehogに関しては一定の結果が得られなかった。これは、Agrinが誘導するアセチルコリン受容体への作用より前に、この二つの因子が筋肉の分化に関わる可能性を示唆している。そのため、作用時間を短くするなどの工夫が必要であると考えられた。一方、BMPまたはTGFbetaのシグナルが阻害剤によって抑制されるとagrinが誘導するアセチルコリン受容体の集積が抑制されることがわかった。shRNAによる阻害実験を検討していたが、発現を抑制するウィルスベクターの探索が遅れ、それを使った実験が間に合わなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の目標であった「興味深いシグナル伝達経路が存在した場合には、ステップ3として各シグナル伝達経路を構成する個々の因子のNMJ形成における機能解析を行う。」現在候補として残っているシグナル伝達経路に関わる因子のいくつかに対するshRNAによる阻害実験を検討し、その配列の設計を行った。しかし、適切な配列の選択作業が遅れたため、期限内までに最終目標にまでは達しなかったものの順調に進展している。 最終目的に対する相対的な達成度合いは「やや遅れている」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
提出された研究計画に基づき、最終的に「NMJにおける増殖因子の機能を知り神経シナプス形成に対する増殖因子の生理的な役割を知るための基盤となる知識を得る」ことをめざし、shRNAの機能阻害実験をすすめる。また抑制薬剤などを用いた機能阻害実験についても、実験を重ねることで確認作業を行う。リン酸化抗体を用いたウェスタンブロットや標的タンパクの発現量の確認など、比較的結果がわかりやすい実験方法を用いて各増殖因子の役割の有無を比較・検討をしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
shRNAにもちいる適切な配列の選択作業が遅れたため,今年度はshRNAの機能阻害実験を実施しなかった。このため、この実験を次年度に実施する費用を次年度使用額とした。 ウィルス産生とウィルス感染に必要な試薬や培地、アセチルコリン受容体の検出に必要な試薬類を計上する計画である。
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