研究課題/領域番号 |
15K06715
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
高橋 弘雄 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20390685)
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研究分担者 |
吉原 誠一 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90360669)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 嗅球 / ニューロン新生 |
研究実績の概要 |
匂いの情報処理を行う嗅球介在ニューロンは、成体の脳内でも新生することが知られる。新生ニューロンが、生涯を通じて組み込まれることで、嗅球の神経回路は維持されている。新たに生まれた嗅球介在ニューロンは、外界からの匂い刺激に応じて神経活動依存的に発達する。一方、「成体においても産生される新生ニューロンがどのような役割を果たし、神経活動依存的な新生ニューロンの発達がいかにマウスの行動を制御しているのか?」という匂い情報処理の機構は未だに明らかにされていない。そこで本研究では、申請者らが見出した神経活動依存的に新生ニューロンの発達を促進する分子(5T4, Npas4)に着目し、「嗅球介在ニューロンの形態変化が、いかにしてマウスの嗅覚行動の制御に関わるのか?」という点を明らかにする。 膜タンパク質5T4は、嗅球介在ニューロンの一部のサブタイプ(5T4陽性顆粒細胞)で特異的に発現する。5T4欠損マウスでは、5T4陽性顆粒細胞の樹状突起の枝分かれが減少する一方、5T4を発現しないその他の顆粒細胞の形態には、全く影響が見られなかった。介在ニューロンである5T4陽性顆粒細胞の接続先を検討した結果、投射ニューロンである外房飾細胞との間に接続があることが明らかとなった。興味深いことに、5T4陽性顆粒細胞の樹状突起の枝分かれが減少する5T4欠損マウスでは、5T4陽性顆粒細胞と外房飾細胞との間の神経接続が顕著に減少していること分かった。 本年度に明かとなった5T4欠損マウスの神経回路の異常と、嗅覚行動の異常との関係性について、今後さらに詳細に検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、5T4陽性顆粒細胞が嗅球の神経回路においてどのようなニューロンと接続しているのか?という点が明らかとなった。本年度の成果により、介在ニューロンである5T4陽性顆粒細胞と、投射ニューロンである外房飾細胞との間で形成される神経回路が、匂いの情報処理に果たす役割が明らかになった点は、大きな成果であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、5T4欠損マウスでみられる嗅球の神経回路の異常と、嗅覚行動の異常の間の関係性について、さらに詳細に検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の使用が少ない電気生理および行動実験による解析を重点的に行ったため、当初の計画よりも消耗品の購入が減ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、ウイルスを作製する必要があるので、細胞への遺伝子導入試薬などの消耗品の購入にあてる計画である。
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