研究実績の概要 |
本研究では、当大学の脳神経外科学と共同で、外減圧術のみならず、内減圧術が必要となった脳梗塞患者より梗塞巣のサンプルを採取し、ヒト由来(脳傷害/虚血誘導性幹細胞:injury/ischemia-induced neural stem cells: iNSPCs)の単離およびその特性に関して検討した。 これまでに、大脳から脳梗塞巣のサンプル(2例)を得ることができ、それらの所見を中心に解析を行った。両症例とも、梗塞巣は病理組織学的に壊死に陥っていたが、免疫組織化学染色にて梗塞領域に神経幹細胞のマーカーであるnestin陽性細胞の発現を認めた。nestin陽性細胞はペリサイトマーカーであるNG2やαSMAを発現していた。梗塞巣から単離した細胞をDMEM/F12, EGF, bFGF等を添加した接着系培地で培養すると、nestinを発現する細胞の増殖を認め、それらもin vivoの所見と同様にペイサイトマーカーを発現していた。さらに、RT-PCRにて、その細胞はnestin以外にも、c-myc, Klf4, Sox2といった幹細胞のマーカーを発現していることが確認できた。FACSにて表面マーカーを調べたところ、間葉系幹細胞(MSC)のマーカーであるCD44, CD90, CD105, CD166を発現していることが分かったが、その割合はMSCに比べて低かった。 これらの細胞を浮遊系で培養すると、neurosphere様の細胞塊を形成し、Tuj1陽性神経細胞に分化することも確認できた。また、この幹細胞は神経系以外の中杯葉系(脂肪、骨、軟骨等)にも分化することから、多能性幹細胞(ischemia-induced multipotent stem cells: iSCs)としての特性も有すると考えられた。
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