研究実績の概要 |
ヒトの言語発達と同様にキンカチョウは成鳥の歌を聴いて覚え、模倣することで歌を学習する。キンカチョウはオスのみが個体ごとに違う歌を求愛歌として唄い、この歌で個体識別をしてることも知られている。歌の学習時に幼鳥は、様々なトリの歌が耳から聴こえてくるにも関らず、自身の種の歌、キンカチョウの歌を聴き分け、これを学習する。またその一方で、それぞれ個々に違う歌を発達させる。本研究ではキンカチョウがどの様にこの‘この個性’と‘種の同一性’という競合する問題を解決しているのか、その神経メカニズムを明らかにすることを試みた。 その結果、キンカチョウは歌の音響構造を学習する一方で、歌のテンポは学習せず、生得的に決定していることを明らかにした。またキンカチョウの第一次聴覚野には歌のテンポと音響構造のそれぞれコードする二つの異なる神経細胞群が存在することを明らかにした。つまり、二つの競合する歌の要素をコードする異なる神経回路が融合して機能することで、歌学習を制御していることを示唆した。さらにこの結果は神経科学の分野だけでなく、二つの競合する情報をどの様に情報の中に組み込み、これを解読するのか、新しい情報処理の方法など、別の分野へも新しい知見を提唱した。本研究結果は論文にまとめ発表し(Araki et al, Science 2016)を行った。さらにプレスリリース、一般公演を行うなど積極的なアウトリーチ活動も行った。
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