研究課題/領域番号 |
15K06728
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
後藤 明弘 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 客員研究員 (10741332)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | LTP / CALI |
研究実績の概要 |
構造可塑性(sLTP)を起こしたシナプスではCofilinがLTPを維持していると考えられている。近傍のタンパク質を不活化できるSuperNova(SN)とCofilinの融合タンパク質(Cofilin-SN)によってCofilinを不活化すると、sLTP誘導後にスパインが縮小し、sLTPが特異的に解除されることを見出した。sLTPをおこしていないシナプスやsLTP後50分以上経過したシナプスには影響はなかった。またsLTP誘導前にCALIをおこしてもsLTPは阻害されなかった。スライスを用いた以上の結果から、本年度は、上記の手法をマウス脳内に応用することによって、LTP後のシナプスでのみ光によってLTPを解除する手法を開発した。 CofilinをCre依存的に発現させるため、Cofilin-SNをfloxで発現制御可能なアデノ随伴ウイルス(AAV)を作成し、CaMKII-Creマウスの両側海馬CA1領域にインジェクションし、Cofilin-SNを神経細胞特異的に発現させた。次に光を海馬CA1に照射するための光ファイバーのカニューレを両背側海馬直上に装着した。記憶を検討するための学習課題は、比較的短時間で行えるinhibitory avoidance test(IA)を用いた。 マウスに麻酔をかけてレーザーと接続し、その後30分間回復させてIAテストを行った。ホームケージに戻してから2-20分後に559nm照射をした場合、照射しなかった場合に比べて暗室に入るまでの遅延が抑制された。つまり、光照射によってLTPが誘導された時間枠でのみLTPが解除できたことになる。 本年度はこの手法をさらに応用して、睡眠中に海馬でLTPが再び誘導されるという仮説の検証を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の目的は光操作によってin vivoで記憶を消去するところにある。現在までの結果から、記憶が形成されてから1-20分後での記憶の消去に成功しており、また記憶形成前では光照射は影響を与えなかった。つまり、光照射によって、LTP誘導後の特定の時間枠でのみ記憶を消去することに成功しており、以上によって、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は本技術を用いて、実際にLTPが誘導されている時間枠を探求する。まず、睡眠中に海馬でLTPが再び誘導されることで記憶が処理されているという仮説を検討する。そのために、脳波を同時に測定し、睡眠の状態を確認しつつ、光照射によるcofilinの不活化によってLTPが解除されるかを検討する。
|