研究実績の概要 |
<はじめに> 研究課題である外側嗅索(LOT)の切断実験を行っている際に、LOTの再生に関して(1)再生軸索線維による機能回復は切断後いつおこるか(2)機能回復がおこるには再生軸索線維がどれくらい必要であるかという神経科学にとって重要な課題に解答が得られたので以下に記載する。<方法と結果>(1)生後2日(P2)の新生児ラットの左LOTを切断した。哺乳期のラットは嗅覚がないと哺乳できないため、LOT切断ラットの機能再生については、胃の中に存在する哺乳したミルクの有無で判定した。その結果、P2で左LOTを切断しP11で右嗅球を吸引除去したラット(n=22)の完全切断例(n=13)において胃内ミルクを認めた時期は、P11が0匹(0%)、P12が9 匹(69%)、P13が4匹(31%)であった。(2)P2ラットの左LOTを切断し、P5で順行性の神経トレーサーであるBDAを両側嗅球に注入した。その結果、LOTの完全切断例において、機能的にまだ再生していない時期(P10, n=5)と機能再生が確認された時期(P12, n=6)の両方で、切断部より尾側でBDA陽性の再生線維が検出された。P10におけるBDA陽性部位の面積 (μm2)と密度 (density index) は、LOT切断側では191,000と0.13で、非切断側では866,000と0.34であった。P12におけるBDA陽性部位の面積 (μm2)と密度 (density index)は、LOT切断側では434,000と0.21で、非切断側では1,105,000と0.35であった。<結論>(1)LOTを切断された新生児ラットの嗅覚は、切断後10日で回復することが明らかになった。(2)LOTを切断された新生児ラットの嗅覚機能回復には、嗅結節レベルにおいて、面積では正常の約40%、密度では正常の約60%の再生線維が必要であることが明らかになった。
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