研究課題/領域番号 |
15K06738
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
西田 有 三重大学, 地域イノベーション推進機構, 助教 (50287463)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タンパク質翻訳後修飾 / SUMO化 / ユビキチン化 / パーキンソン病 / 神経変性疾患 / 遺伝子発現 / タンパク質分解 / 転写制御 |
研究実績の概要 |
本研究は神経変性疾患に関与すると考えられる遺伝子産物、特に転写制御因子のSUMO化を解析し、その機能と神経変性への関与を解明することを目的とする。家族性パーキンソン病の原因遺伝子parkinの産物であるユビキチンリガーゼParkinの基質として同定された転写因子PARISがSUMO化されることを明らかにし、その機能の解析を行った。PARISのSUMO化はPGC-1αプロモーターにおける転写活性に対して主に抑制的に機能するが、一部活性化にも機能すると考えられた。SUMO-E3リガーゼPIASyはPARISと相互作用し、そのSUMO化を促進し、PGC-1αプロモーターの転写を強く抑制した。またPARISによる転写抑制はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性に依存的であるのに対し、PIASyによる転写抑制はHDAC活性非依存的であり、PIASyによる抑制はPARISのSUMO化を介さない経路でも作用すると考えられた。さらにPARISのSUMO化はプロテアソームの阻害によって変化することを見出した。SUMO3化されたPARISは顕著にユビキチン化が亢進し、このユビキチン化はSUMO依存型ユビキチンリガーゼRNF4の活性に依存して亢進した。以上の結果はPARISのユビキチン化はこれまでに報告されているParkinの他、新たなユビキチンリガーゼとしてRNF4が作用すると考えられた。PIASyはPARISのSUMO化を促進する一方、SUMO化依存的なユビキチン化を阻害した。RNF4によるユビキチン化はポリSUMO鎖の形成が必要とされるが、ポリSUMO鎖を形成するSUMO2/3に特異的なSUMOリガーゼZNF451とPARISの相互作用を確認し、現在その機能の解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度にはPARISのSUMO化の制御機構を明らかにし、さらにPARISの転写抑制活性に与えるSUMO化の影響について解析を行い、新たな知見を得た。本年度は前年度の研究結果をふまえて当初の計画を一部変更し解析を行った結果、PARISのSUMO化がそのユビキチン化を促進するという新たな知見を得ることができた。現在PARISのSUMO化を介したユビキチン化の制御に関わる因子を同定し、さらなる解析を進めている。平成27年度までに得られた成果は学術誌に論文発表し、本年度の成果についても日本農芸化学会2017年度大会において学会発表を行い、現在学術誌へ論文投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に平成27,28年度の研究において得られた結果をふまえて最終年度も研究を発展させるべく継続して計画に沿って研究を進める予定である。特に培養細胞における遺伝子導入による過剰発現系で得られた結果がどのような生理的意味を持つのかを、小胞体ストレスなどの細胞ストレス応答に関連した解析を行うことにより明らかにし、神経変性疾患の発症メカニズムにおけるSUMO化の役割について考察する。
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