研究課題/領域番号 |
15K06740
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
渡邉 裕二 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (80301042)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発生 / 神経 / 視蓋 / 層形成 / 細胞移動 |
研究実績の概要 |
脊椎動物の中脳背側部を占める視蓋は、ヒトを含む哺乳類の上丘に相当し、視覚・聴覚・体性感覚の入力を受けて感覚地図の作成・統合に機能する。視蓋の層構造は、発生期での放射状方向および接線方向への細胞移動を介して構築される。我々は多層構造を発達させるニワトリの視蓋形成に注目して、視蓋層形成過程における細胞移動とその制御機構について調べている。 我々は特定の発生段階にあるニワトリ視蓋の脳室層にGFP発現ベクターをエレクトロポレーションにより遺伝子導入して、その後の層形成過程でのGFP標識された細胞の動きを追跡した。上層に向けて放射状方向へ移動していく細胞の一部は、はじめに中間層で、次に浅層で接線方向に転換して、特定の層の中を視蓋全域へ広がって移動していくことがわかった。中間層を移動する細胞群は、双極性で長い先導突起と後続突起を持ち、視蓋から出力する軸索を足場にして背腹両方向に移動していき、神経分化とともに上層へ移行してMAP2/Neuropilin1陽性の多極性の神経細胞に分化した。また浅層を移動する細胞群は、分枝した先導突起を持ち、多方向に拡散していき、NeuN/Hu 陽性の神経細胞に分化した。これら時期・移動経路・移動様式・分化運命の異なる2種類の接線方向への細胞移動は、視蓋の層形成を特徴づけるものであり、層形成機序の重要な構成要素であると考えられる。 細胞移動の制御に働く可能性をもつ因子としてニワトリの糖タンパク質リーリン(Reelin)の遺伝子を単離し、アルカリファスファターゼで標識されたAP-Reelin融合タンパク質を作成して、視蓋層形成過程でこれに結合するリーリン受容体の分布を調べた。リーリン受容体は中間層を移動する細胞の上層と、浅層を移動する細胞の層に分布していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中間層の移動細胞をスライス培養下で観察できるようになったので、移動様式についての理解が進展している。 また細胞移動に関わると考えられるニワトリ・リーリン遺伝子を単離することができた。
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今後の研究の推進方策 |
細胞移動の制御に働く可能性をもつ因子であるリーリン(Reelin)を層形成過程の視蓋に強制発現して、中間層と浅層での接線方向への細胞移動に与える影響を調べる。またリーリンのsiRNAによるノックダウン実験を行い、細胞移動の変化について解析を進める。
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