研究課題/領域番号 |
15K06743
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
辰巳 晃子 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90208033)
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研究分担者 |
森田 晶子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70647049)
和中 明生 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90210989)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アストロサイト / Olig2 / 大脳基底核 / パーキンソン病モデルマウス / オプトジェネティクス / アデノ随伴ウイルス |
研究実績の概要 |
成熟マウスの脳内において、転写因子Olig2由来のアストロサイトが多く存在する事をOlig2-creERノックインマウスを用いた系譜実験により明らかにした。このアストロサイトは脳部位特異的に局在しており、アストロサイトのサブポピュレーションを構成すると考えられる。そして生理的な条件下でマウスに運動負荷を与えて神経活動を活性化させると、大脳基底核回路を形成する淡蒼球においてこのアストロサイトはダイナミックに形態を変化させて複雑な構造に変化する事、さらに一定期間運動を停止するとその形態は元に戻る事を免疫電子顕微鏡学的手法により明らかした (Front Cell Neurosci. 2016 Jun 21;10:165)。これは神経活動とアストロサイトの活性化が密接に関連している事を強く示唆している。そこで人為的なアストロサイトの活性化が神経活動へ与える影響を検討する目的で、光遺伝学の手法を導入した。Olig2由来細胞がチャネルロドプシン(ChR2)を発現するマウスを作成し、光ファイバーを挿入して青色レーザー光を照射しOlig2由来のアストロサイトを光刺激する事を試みた。レーザー光の強度、照射頻度、時間を変化させて動物の行動の変化を詳細に解析した結果、アストロサイトの活性化がマウスの行動変化を惹起する可能性を見出している。更にチャネルロドプシンの発現を限局させる目的で、アデノ随伴ウイルスをOlig2-creERノックインマウスの目的脳部位に感染させる実験も並行して行っている。 大脳基底核の病態モデルとして、片側にドーパミン神経毒である6-OHDAを投与することによりパーキンソン病モデルマウスを作成した。このマウスは損傷側への回転運動を示すが、この部位でのアストロサイトの人為的操作により運動症状を改善できるかについて現在検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アストロサイトの活性化がマウスの神経活動に変化を惹起する可能性を見出している点で研究成果がみられるが、個体差などがあるため慎重に再現性をとる必要がある。また6-OHDA投与による片側パーキンソン病モデルマウスは概ね安定して作成できている点で順調といえる。 しかし、Olig2由来のアストロサイトの人為的操作するターゲット部位を淡蒼球としていたが、パーキンソンモデルマウスの神経活動の詳細な検討の結果、大脳基底核の視床への最終出力核である中脳網様部(SNR)へターゲットを変更したため、オプトジェネティクス法による光刺激条件の検討などに時間を要した。またアデノ随伴ウイルス感染によりChR2の発現を限局化しようと試みているが、Olig2-creERノックインマウスへの感染効率が非常に悪く、タモキシフェン投与時期などの検討を行っているため、予定よりやや遅れている現状である。
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今後の研究の推進方策 |
大筋は本課題の研究実施計画に従って研究を進める。 ChR2を発現するトランスジェニックマウスの使用を予定していたが、ChR2の発現をより限局化するためにアデノ随伴ウイルスの使用に変更する。この感染が思わしくない場合を考え、引き続きトランスジェニックマウスの使用を並行する。 光ファイバーを中脳網様部へ挿入することから、パーキンソンモデルマウス作成において6-OHDAの投与場所を中脳緻密部から内側前脳束に変更し脳の損傷を最小限に抑える。この作成方法は確立できているが、投与後のマウスの健康状態や行動変化、運動症状などの経時的なチェックが必要である。
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