研究課題/領域番号 |
15K06751
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
北浦 弘樹 新潟大学, 脳研究所, 助教 (80401769)
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研究分担者 |
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80281012)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | てんかん / 海馬硬化症 / 脳スライス |
研究実績の概要 |
内側側頭葉てんかんのてんかん原性は切除された海馬内、それも歯状回顆粒細胞層またはSubiculumに存在するという見方が近年強まってきている。そのため本研究では、それぞれの領域を中心にてんかん患者の切除海馬標本から神経活動を記録し、その異常活動の裏付けとなる形態異常を探索することを中心課題として進めている。具体的に検討している項目は、①切除海馬標本における異常神経活動の測定と海馬硬化症の進展度合い、②異常神経活動の発生機序を薬理学的・生化学的・免疫組織学的に検討、③脳透明化技術(CUBIC)を応用した神経ネットワークの可視化と3次元的構築である。 本年度までに、歯状回顆粒細胞層のMossy fiber sproutingの出現はILAE分類のType I(古典的海馬硬化症)に限られること、また、臨床的・病理組織学的に明らかな海馬硬化症を認めない症例を含め、程度の差はあるものの、すべての内側側頭葉てんかんにおいてSubiculumでのてんかん用神経活動を捕捉した。これらのin vitroにおいて観察されたてんかん様神経活動は、脳波上てんかん原性と関連が深いとされる高周波成分(HFOs)を含んでいた。さらに、HFOsはILAE Type IおよびType IIの海馬硬化症のSubiculumにおいては、細胞外カリウム濃度の変化に鋭敏であり、局所での細胞外カリウムのクリアランスに支障をきたしていることが示唆された。また、アストロサイトにおける内向き整流性カリウムチャネル4.1(Kir4.1)の発現解析を行うと、細胞外カリウム濃度に対するHFOsの鋭敏性が見られた症例において減少している傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
切除された実際の海馬てんかん病巣から病態生理学的解析を行い、Subiculmと歯状回での二元的なてんかん原生について初めて明らかにし、かつ、それらと病理組織学的な海馬硬化症の分類についての関連を検討できたことは、今後の治療展開を考えるうえでも大きな意義を持つと考えられる。一方で、組織透明化による形態学的解析に関しては、透明化研究は順調に進んだものの、それに施す染色手法の開発に時間を要し、当初想定した成果は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
さらに実験を行い、自発発火における周波数解析を進めて、そのメカニズムを探索する。また、組織透明化後の免疫染色プロトコールの開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度については生理学実験がおおむね順調に進展し、予想よりも経費が掛からずに済んだ。一方で、組織透明化による形態学的研究は次年度に繰り延べた面があり、予算もそれに応じて次年度へ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
組織透明化技術を応用した形態学的研究や、単一細胞レベルでの機序解析へ向けた研究経費として使用する。
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