研究課題/領域番号 |
15K06752
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
清水 宏 新潟大学, 脳研究所, 助教 (40608767)
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研究分担者 |
豊島 靖子 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (20334675)
高橋 均 新潟大学, 脳研究所, 教授 (90206839)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多系統萎縮症 / 酸化ストレス / 乏突起膠細胞 / 鉄代謝 |
研究実績の概要 |
本研究では、多系統萎縮症(Multiple system atrophy; MSA)では鉄代謝異常と酸化ストレス亢進が病態の一つであるという仮説を立て、特に乏突起膠細胞に注目しこれを検証することを目的とする。 平成27年度は、MSA剖検例4例および正常対照2例の被殻を用いて、上記仮説を免疫組織学的に検討した。リン酸化アルファシヌクレイン免疫染色、鉄関連染色(Berlin blue染色、フェリチン免疫染色)、酸化ストレスマーカー関連染色(8-hydroxy-D-guanosine (8-OHdG)、4-hydroxy-2-nonenal (4HNE)、malondialdehyde (MDA)免疫染色)を行った。MSA全例でリン酸化アルファシヌクレイン陽性の乏突起膠細胞胞体内封入体(glial cytoplasmic inclusions: GCIs)を認めた。Berlin blue染色では、発症5年以内の症例では、GCIs含有乏突起膠細胞、またミクログリアが強陽性を示し、まれに腫大アストロサイトの胞体が陽性を示した。罹病期間が長くなり乏突起膠細胞が脱落するに従いアストロサイトの陽性像が増強し、またニューロピルのびまん性点状陽性像が出現した。発症10年以上の長期例では、荒廃した組織中に残存する大型神経細胞の胞体が陽性を呈した。フェリチン免疫染色ではほぼBerlin blue染色と同等の結果が得られた。酸化ストレスマーカーによる染色では、MDAによりGCIs含有乏突起膠細胞の胞体が染色されたが、染色のバックグラウンドが強いことが問題であった。4HNEでもバックグラウンドが強く、染色条件を再検討する必要がある。8-OHdG染色では、MSA、正常対照の神経細胞・グリア細胞核が陽性となり、両群間で差を見いだせなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
剖検脳組織を用いた検討では、各種の酸化ストレスマーカーによる免疫染色において全体的にバックグランウンドが強く、検討に用いる抗体の選択と条件検討に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
MSAでは被殻に鉄が沈着することが知られているが、その初期例の組織学的観察では、乏突起膠細胞へ鉄が沈着することが明らかにされた。その結果として具体的にどのような鉄代謝障害が乏突起膠細胞に生じているかを明らかにするために、Tim2やフェロポーチンなどの免疫染色を行う。これらの鉄代謝関連蛋白質について、MSA剖検脳で正常対照とは異なる染色パターンが得られた場合は、凍結組織を用いたウェスタンブロットによりそれらの発現を検証する。また乏突起膠細胞における鉄過剰はミエリン形成の障害を引き起こすことが予想される。そこでMSA被殻における鉄の沈着とputamino-pallidal fiberのミエリン染色性の変化の関連について解析する。 パーキンソン病やMSAの動物・細胞モデルによる解析では、過剰な鉄沈着に伴う酸化ストレス亢進が報告されている。本研究では、MSA剖検脳の被殻において免疫組織学的に酸化ストレスの評価を行っているが、感度と特異度の両面で不十分であり、引き続き抗体の選定と染色条件の検討、未検討の酸化ストレスマーカー(heme-oxygenase-1 (HO-1)やcarboxymethy lysineなど)による解析が必要である。またパラフィン包埋切片のみならず、OCT包埋急速凍結組織切片を用いた検討を追加する。 こうした検討をより多数例のMSA剖検例で行い、また黒質線条体変性優位型およびオリーブ橋小脳変性優位型の2病理病型において何らかの差異が認められるかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品類の支出が計画より低く抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
計画の通り抗体の購入やウェスタンブロット試薬等に充当し研究を遂行する。
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