研究課題
「社会性の障害」を特徴とする自閉症の有病率は1%以上とも言われており、世界的に大きな社会問題となっている。これまでの自閉症の研究は、シナプス形成や神経回路形成などの神経発達の視点から主に行われてきたが、未だその病態解明には至ってない。一方、自閉症患者の画像解析や死後脳解析により、自閉症患者脳では神経細胞だけでなくオリゴデンドロサイトをはじめとするグリア細胞の発達異常が報告されている。これらの事実は、自閉症の病態形成に神経細胞のみならず、オリゴデンドロサイトを含むグリア細胞の発達異常が含まれる可能性を示唆している。我々自閉症病態の解明を目的とし、自閉症モデルであるCD38ノックアウト(KO)マウスの生後脳発達の解析をグリア細胞に着目し、行った。その結果、①生後7-14日齢におけるオリゴデンドロサイトの分化異常が見られる。②生後7日においてアストロサイトの発達異常も見られる。③成体マウスにおいては、これらの発達異常は認められない。が明らかとなった。今後は、CD38がアストロサイト及びオリゴデンドロサイトの分化を制御するメカニズムを明らかにするために、①生後発達期におけるCD38発現細胞の同定 ②培養アストロサイトを用いた、分化メカニズムの解明 ③アストロサイトとオリゴデンドロサイト共培養による分子メカニズムの解明を行っていく予定である。これらの研究を推進することにより、未だ不明である、グリア細胞の発達異常を基盤とした自閉症発症メカニズムの解明につながると考える。
2: おおむね順調に進展している
28年度に予定していた培養オリゴデンドロサイトを用いた分化メカニズムの解明及びノックアウトマウスを用いたDNAマイクロアレイ等の実験は、予定通り終了した。その結果、アストロサイトとオリゴデンドロサイトの相互作用の重要性、CD38下流因子が明らかとなったため、当初の予定通り進行している。
今後は、CD38がアストロサイト及びオリゴデンドロサイトの分化を制御するメカニズムを明らかにするために、①生後発達期におけるCD38発現細胞の同定 ②培養アストロサイトを用いた、分化メカニズムの解明 ③アストロサイトとオリゴデンドロサイト共培養による分子メカニズムの解明を行っていく予定である。また、オキシトシンがグリア発達に与える影響及びグリア発達異常がオキシトシン産生や分泌に与える影響も検討していく。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
J Neurochem.
巻: 132(3) ページ: 342-53
10.1111/jnc.12981.
J Neurosci.
巻: 18;35(7) ページ: 2942-58.
10.1523/JNEUROSCI.5029-13
Front Neuroanat.
巻: 30 ページ: 9-52
10.3389/fnana.2015.00052.
http://med03.w3.kanazawa-u.ac.jp/