研究課題
RNA-蛋白結合を網羅的に検出するCLIP法の改良に取り組み、従来1000万個の細胞が必要であったところを、わずか4000個の細胞から解析が可能となる画期的な新手法の開発に成功した。ALS関連RNA結合タンパクFUSを標的として、whole cell lysatesを用いて、本手法と従来法の比較検討を大規模シークエンス解析により行ったところ、従来法と同等の特異性を保ちつつ、感度は10万倍程度高いことを確認できた。手技としては、むしろ簡略化しており、従来法で4日かかる実験を、僅か1.5日で終えることが可能となり、非常に有効な手法と考えられた。さらに、この新手法の応用法を探るため、細胞分画ごとのFUS-RNA結合の網羅的解析に取り組み、成功した。神経芽細胞種由来セルラインN2A細胞を用いて、転写複合体中やスプライシング複合体中に限局したFUS-RNA結合の解析を行い、FUSは転写複合体中で特異的に転写終結点に結合していることを見出した。スプライシング複合体中では、選択的スプライス部位周囲にFUS-RNA結合が高頻度に認められ、転写複合体中とは異なる分布を示した。高感度な本手法の利用により、初めて、細胞分画特異的なRNA-タンパク結合の網羅的解析が可能となった。また、CRISPR-Cas9により、セルラインへの変異導入に取り組み、成功している。FUSをその標的部位(Ewsr1遺伝子のプロモーター領域)に人工的に係留させるためのMS2 hairpin配列導入を行い、導入に成功したセルラインを10個以上、確保した。これら変異セルラインを用いて、正常および変異FUSの機能解析を現在、遂行中である。
1: 当初の計画以上に進展している
微量CLIP-seq法の開発に成功した。研究計画では、従来法の1/10の細胞数からの検出を目的としていたが、新手法は、目標を大きく上回り、1/2500の細胞数から実施できることを確認した。従来法とは一線を画する性能を持つ本手法は、今後の研究を飛躍的に発展することが期待される。また、CRISPR-Cas9により、セルラインへの変異導入に取り組み、FUSを標的部位に人工的に係留させるためのMS2hairpin配列導入に成功しており、CRISPR-Cas9による変異導入法を確立した。
新規開発手法を用いて、従来、不可能であった、様々な細胞分画における特異的なRNA-タンパク相互作用の解析を進めていく。特に、ALS変異によるRNA結合タンパクの結合部位変化は、細胞分画ごとに異なっていることが予想されているが、実証されていない。今後は、神経突起、軸索、クロマチン分画、ストレス顆粒などのRNA-タンパク結合が著明な細胞分画を抽出し、部位特異的なRNA-タンパク結合のALS変異による変化を解析することで、ALS病態解明に取り組む予定である。解析対象蛋白としては、FUSに加え、近年、新たなALS関連RNA結合タンパクとして同定されたMATR3を予定する。
次世代シークエンサーを用いた、新規CLIP法のdata解析に遅れが生じている。これは、効率化のため、多数のライブラリーを作製した後、まとめて次世代シークエンス解析を行うためである。現在、多数のライブラリーを作製し、ストックしている途中であり、次年度の次世代シークエンス解析で、次年度使用額を使用する予定である。
次世代シークエンス解析を行うことで、次年度使用額を使用する。
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