研究課題/領域番号 |
15K06755
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
増田 章男 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (10343203)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | FUS / CLIP / RNA-タンパク相互作用 |
研究実績の概要 |
RNA-タンパク相互作用解析の標準手法CLIP-seq法の限界を克服する新手法(tRIP法)の開発に成功した。tRIP法は、CLIP法の独特なRNA精製ステップを省略し、代わりにexonucleaseによる酵素処理でバックグラウンドRNAを消失させることにより、圧倒的な効率化を達成している。tRIP法は、CLIP法と同等の特異度を保持しながら、最新のCLIP法と比べても100倍以上の感度でRNA-タンパク複合体を検出し、僅か4000個の細胞からRBP標的RNA部位の大規模シークエンス解析が可能である。プロトコールは、免疫沈降・酵素処理・ライブラリー構築から構成され、1.5日で全工程が完了する (CLIP法なら4日間)。特殊な手技や試薬の必要は無い。申請者は、CLIPで解析不可能であった、15種のRBP解析にtRIPで成功した。 さらに、tRIP法で、機能性分画からのRNA-FUS相互作用検出を行った。FUSは、pol2転写複合体, スプライソソーム、Kinesinの担体であるRNA cargoなど様々な機能性分画に局在するが、局所でのFUS機能の詳細は、未だ不明である。細胞にUV-crosslinkしてRNA-タンパク相互作用を固定した後、まず、各分画の主体となるコンポーネント (RBP1, U1snRNP, Kinesin) に対する抗体で免疫沈降を行った。続いて、共沈されたRNA-タンパク複合体に対して、さらに抗FUS抗体によるtRIP解析を行って、各分画に特異的なFUS標的RNA部位の検出を行った。pol2転写複合体中では、FUSは転写終結点周囲に、スプライソソーム中ではFUSはスプライスサイト周囲に結合が集中しており、機能性分画ごとにFUSが異なる結合分布を示すことを初めて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、FUSの機能解析のため、tRIP法とPolyA-seqのシークエンシング結果の統合バイオインフォマティクス解析を行っている。FUSが転写終結を担う事は、以前の解析からすでに明らかとなっており、当初、転写複合体との単純な相互作用に基づくと予想していた。しかし、解析結果は、FUSとスプライソソームとの複雑な連携が転写終結を制御していることを示しており、さらにtRIPやPolyA-seqを行う必要が生じた。新たなtRIPおよびPolyA-seqライブラリーの作製を行うこととなり、進捗状況としてはやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
様々な条件下で培養した細胞の、tRIPおよびPolyA-seqライブラリーの作製を行い、ALSにおけるポリアデニル化障害の詳細を明らかにする。作製した、ライブラリーは、大規模シークエンシングを速やかに行い、バイオインフォマティクス解析を行っていく。既存の、databaseとの統合解析を行うことにより、未知のFUS機能解明に挑む。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の実施中に、FUSが予期せぬ結果を得たため、さらなる解析が必要となった。 具体的には、FUSが転写終結を担う事は、以前の解析からすでに明らかとなっており、当初、転写複合体との単純な相互作用に基づくと予想して、tRIP法とPolyA-seqのシークエンシング結果の統合バイオインフォマティクス解析によるFUS機能解析を行っていた。しかし、解析結果は、FUSとスプライソソームとの複雑な連携が転写終結を制御していることを示しており、さらに異なる条件下でのtRIPやPolyA-seqを行う必要が生じた。新たなtRIPおよびPolyA-seqライブラリーの作製によていより時間を要することとなり、シークエンス解析がよていより遅れることとなった。このため、実験計画に遅滞が生じ、次年度使用額が発生した。
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