研究課題
マイクログリアにGFPを発現させた遺伝子組み換えマウス(B6.129P-Cx3cr1<tm1Ltt>/J)の左側頭頭頂葉上に直径3 mmの閉鎖頭窓を作成後、0-21日の間で二光子顕微鏡を用いて、マイクログリアおよび血管網の3次元形状を反復観察した。203×203μm(0.2μm/pixel)にて撮像し、脳血管を観察するために撮像の直前にSulforhodamine 101を腹腔内投与したうえで、脳表から深さ400-950μmまでを1.0μmの間隔で1匹あたり1~3箇所撮像した。解析ソフトMatlabを用いて単一のマイクログリア画像を抽出し、撮像平面上における最大値投影画像上において、マイクログリアの細胞体面積および細胞体中心から半径10μmの円周上における足突起の数について評価した。また、脳血管の形状を基に血管に対するマイクログリアの相対的な位置を求め、マイクログリアの遊走距離および遊走数(率)および細胞の新生について評価した。頭窓作成0-21日において突起を伴ったマイクログリアを脳表から最深950μmまで明瞭に観察し得た。細胞体断面積は、頭窓作成後の日数に関係なく一定値が得られた(平均33μm2)。また、突起本数に関しては、1細胞あたり平均10.3本であり、深さによる変動はなく、頭窓作成後も有意な変化は認められなかった。さらに、細胞体の遊走量に関しては頭窓作成後7日間で6μm以上移動した細胞が観察領域内で認められ、新たな細胞の出現を確認した。これらのことから、生体マウス脳内において同一のマイクログリアに関して長期のin vivo反復観察が可能であることを確認した。さらに、低酸素(8%)灌流装置内で2週間飼育したマウスにおいて同様の撮像を行い、血管新生とマイクログリアの新生、遊走を確認した。
2: おおむね順調に進展している
B6.129P-Cx3cr1<tm1Litt>/Jマウスの頭窓を通して実質内マイクログリアの測定条件を確定し、長期的に反復in vivo 観察することができるようになり、さまざまなモデルマウスにおける観察ができるようになった。
頭窓を施したB6.129P-Cx3cr1<tm1Litt>/Jマウスを用い、イソフルラン麻酔下で血管およびアストログリア細胞の生体蛍光マーカであるSulforhodamine 101(5-10 mM)を腹腔投与(8μl/g)する。これにより、血管の走行が確認でき、全く同じ部位での反復観察が可能になる。頭窓を通して一次体性感覚野の微小血管内及びアストログリアにおける蛍光強度を二光子顕微鏡法によって5分から30分毎に測定する。経日的に同様の実験プロトコルで繰り返し継続観察を行う。これにより脳虚血時の微小血管・神経細胞・アストロサイトと、マイクログリア細胞の動的連携について脳皮質のみならず、さらに深部における変化まで多角的に可能な限り明らかにしていく。さらに、低酸素飼育下モデル、中大脳動脈閉塞モデルにおける変化を求め、neuro-glio-vascular couplingにおけるマイクログリアの役割について総合的な解明を目指す。
前年度の内定通知が後期だったため、国際学会への参加費用として使用できなかった分が繰り越された。また、論文の作成が遅れており、その際に必要な英文校正、投稿料、掲載料などに使用できなかったため。
神経遮断薬などの薬剤、動物の購入や飼育費、記録に要するハードディスクなどのメディア、論文作成に必要な英文校正や掲載料など、広く使用する予定である。さらに、共同研究を行っている光遺伝学の研究を推進するに当たり、刺激用のLED光源の購入を計画している。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
J Cereb Blood Flow Metab
巻: 37 ページ: 657-670
10.1177/0271678x16636396
Int J Oncol
巻: 48 ページ: 525-532
10.3892/ijo.2015.3300
Sci Rep
巻: 6 ページ: 25072
10.1038/srep25072
Microcirculation
巻: 23 ページ: 416-425
10.1111/micc.12285