研究課題
脊髄小脳失調症(SCA)は、歩行時のふらつきや手の震え等の運動失調を主症状とする神経変性症の病気である。小脳や脳幹の萎縮がみられるという特徴がある。近年、脊髄小脳失調症の様々な原因遺伝子がIP3R1を介した細胞内カルシウム動態と何らかの関わりを持つことが示唆され、IP3R1からのカルシウム動態が脊髄小脳失調症発症の中心的役割を果たすという仮説が考えられている。そこで、SCA原因遺伝子とIP3R1カルシウム動態との関連を明らかにすることを試みている。本年度はSCA関連遺伝子Xの解析を進め、次の知見を得ることができた。遺伝子Xは、細胞において多量体を形成してクラスター状に分布しており、それがレドックス依存的に制御されるメカニズムを明らかにした。また、遺伝子Xは、海馬や小脳の神経細胞においてリン酸化されていることを発見し、そのリン酸化は、リン酸化酵素Yにより担われていることを明らかにした。実際、海馬神経細胞に酵素Yの阻害剤を投与するとそのリン酸化が有意に低下することを明らかにした。また一方、遺伝子Xの機能については現在までに全く明らかにされていないため、のヒト変異型遺伝子Xをマウスに過剰発現させて、マウスの行動、神経細胞の機能に与える影響を明らかにすることにした。まず、ヒト変異型遺伝子XをマウスBac cloneの遺伝子Xプロモーターの下流に挿入したコンストラクを作成し、そのDNAをマウス受精卵にインジェクションしてトランスジェニックマウスを作製した。その結果、ヒト変異型遺伝子Xトランスジェニックマウスは、生後10週齢くらいから歩行異常を示すことを明らかにした。このトランスジェニックマウスはgeneXの生理的機能を明らかにする上で有用なモデル動物となると考えている。
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http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170613_1/