研究課題/領域番号 |
15K06762
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山中 智行 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (00381575)
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研究分担者 |
下郡 智美 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (30391981)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 小胞体 / 神経変性 / 転写因子 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
これまでに転写因子NF-Yをマウス脳の異なる神経細胞種でノックダウンし、その影響を観察してきた。その結果、大脳の錐体細胞、線条体の有棘神経細胞等では、小胞体での異常タンパク質蓄積を引き起こすものの、運動ニューロンでは同病態は観察されなかった。詳細な解析により、小胞体シャペロンの選択的発現制御がここに関わっていることを見出してきた(Yamanaka T et al. Nat Commun 2014, Sci Rep 2016)。今年度は、これらについてまとめた総説論文(査読付き)を発表するとともに、その病態機構について、トランスクリプトームを用いた解析を行った。まず、NF-Yノックダウンによる影響を選択的に解析するため、NF-Yノックダウンした神経細胞をセルソーターにて回収した。RNAを精製し次世代シーケンサーにより、発現変動する遺伝子群を網羅的に同定した(RNA-seq)。遺伝子分類解析により、小胞体に局在する遺伝子群が濃縮していることが見出され、NF-Yがin vivoにおいても小胞体関連遺伝子の発現を制御していることが明らかとなった。同様に、神経系培養細胞においても、NF-Yノックダウンを行い、DNAマイクロアレイにて発現変動遺伝子を検索したところ、やはり、小胞体に局在する遺伝子群が濃縮していることが見出された。よって、NF-Yは神経系細胞では、小胞体関連遺伝子の発現を調節するキーファクターであり、この異常が神経変性に関わることが示唆された。これらをについてまとめ、2つの国際学会(The 8th International Symposium on Autophagy、World Congress of Neurology 2017)及び第五回NGS研究会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中枢神経系でのNF-Yノックダウン細胞を用いたトランスクリプトーム解析は終わっており、多数の小胞体関連遺伝子の発現変化が同定されつつある。ただ、個々の遺伝子についての解析はまだ進行中であり、その分子機構は未だ不明な点が多い。
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今後の研究の推進方策 |
上記トランスクリプトーム解析で得られた遺伝子群について、培養細胞系にて、小胞体形態やタンパク質蓄積などへの関与を調べ、小胞体病態にいたる分子機構の実体の同定を目指す。また、NF-Yノックダウン細胞で観察される異常小胞体自体を密度勾配遠心法や免疫沈降法にて単離し、網羅的プロテオーム解析による蓄積タンパク質に着目した解析も同時に行い、トランスクリプトーム、プロテオームの両観点からの小胞体病態機構の全貌の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、転写因子NF-Yの活性阻害による小胞体病態の分子機構について解析を行い、その一部については明らかとしてきたが(Sci Rep 2016)、その全体像は未だ不明である。このために、プロテオーム、トランスクリプトーム等を駆使したより包括的な研究が必要となった。次年度は、マウス飼育管理や、qPCR, DNA microarray、網羅的質量分析などに多額の費用が必要であり、これらのために、研究費が必要となった。
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