研究実績の概要 |
これまでに転写因子NF-Yをマウス脳の異なる神経細胞種でノックダウンし、その影響を観察してきた。その結果、大脳の錐体細胞、線条体の有棘神経細胞等では、小胞体での異常タンパク質蓄積病態を引き起こすものの、運動ニューロンでは同病態は観察されなかった。詳細な解析により、小胞体シャペロンの選択的発現制御がここに関わっていることを見出してきた(Yamanaka T et al. Nat Commun 2014, Sci Rep 2016)。また、その病態機構について、マウス脳よりNF-Yノックダウン細胞をセルソーターにて回収し、RNA-seqによる網羅的トランスクリプトーム解析を行い、遺伝子分類解析により、小胞体に局在する遺伝子群が濃縮していることを見出しており、国際・国内学会で発表した。今年度は、小胞体病態を示す細胞モデルを作製し、病態に伴いどのような分子変化が引き起こされるかについて検討した。まず、小胞体を生化学的に単離する手法を確立し、これを質量分析で解析する網羅的プロテオミクスを行った。その結果、小胞体自体の構成成分は変化していないが、小胞体と他オルガネラとの相互作用が影響されていることが示唆され、小胞体の異常がどのようにして細胞機能障害を引き起こすか、その一メカニズムを見出しつつある。これについてまとめ、国際学会(Cold Spring Harbor Laboratory Conference)、及び国内学会(第70回日本細胞生物学会大会)にて発表した。
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