研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンの選択的な変性脱落により死に至る最も過酷な神経変性疾患であり,ニューロン,グリアにリン酸化TDP-43蛋白を含む細胞質凝集体が出現する.我々はこれまで,ヒト正常TDP-43とそのC末断片を発現する組換えアデノウイルスをプロテアソーム阻害条件下で培養ニューロンや成体ラット・マウス運動ニューロンに感染発現させると,ALSに特徴的なリン酸化TDP-43を含む不溶性の細胞質粗大凝集体が高率に形成されることを報告した(Watabe et al., 2014).一方,培養タイムラプス解析により,正常およびC末断片DsRed/TDP-43組換えアデノウイルスをニューロンに感染発現させプロテアソーム阻害剤MG-132を負荷すると,DsRed陽性TDP-43凝集体が細胞質に徐々に充満し,細胞膜の破綻とともに細胞死に至り,細胞外に放出された不溶性凝集体が培養液中に長時間残存する像を観察した.この凝集体はリン酸化TDP-43を含む不溶性の顆粒状構造物からなり,隣接する細胞に取り込まれ,時間とともに細胞質で増大し,凝集シードとして機能することを見出し,ALSにおけるTDP-43凝集体の形成および細胞間伝播を反映するものと考えられた (Ishii et al., 2017).さらに,この培養TDP-43細胞質凝集体形成モデルに対して,熱ショック応答のマスター制御転写因子であるheat shock transcription factor 1 (HSF1) を発現する組換えウイルスを共感染させたところ,TDP-43凝集体形成が顕著に抑制された.そこで現在,cDNA マイクロアレイを用いてHSF1の下流で働くTDP-43凝集体抑制候補分子についての発現および機能解析を行っており,ALSに対する新規治療法開発の糸口に繋げていきたいと考えている.
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