研究課題/領域番号 |
15K06766
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
吉田 秀見 弘前大学, 医学研究科, 講師 (40201008)
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研究分担者 |
丹治 邦和 弘前大学, 医学研究科, 助教 (10271800)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | アミロイドβ / アルツハイマー病 / カルノシン酸 / エダラボン / レスベラトロール / レバミピド / 神経変性疾患予防 / 脳保護 |
研究実績の概要 |
申請者らは既報(Mengら, Neurosci Res 2015; 94: 1-9)において、ハーブ油成分(カルノシン酸)がアミロイド非産生経路の活性化を介して神経系細胞のアミロイドβ(Aβ)産生を抑制し、さらに外来性Aβの細胞内オリゴマー化をも抑制することを報告した。本研究の目的は、この独自研究を発展させ、アルツハイマー病の主因とされる脳内Aβが引き起こす神経毒性の新しい抑制法を開発することである。 平成27年度の当初計画は、「Aβ産生・毒性の抑制のための薬剤群の至適条件の検討」であった。即ち、前述のカルノシン酸の効能を中心に位置づけ、培養神経細胞モデルにおけるAβの産生及び毒性制御に対する、エダラボンと天然有機成分(カルノシン酸やレスベラトロール)、既存薬(現在は神経保護に関して適応外)などとの併用による安全で効率的な協調的抑制効果を詳細に検討し、至適条件を探った。特に、注目した既存薬の中で未検討だった胃炎・胃潰瘍治療剤レバミピドが、30~100 nMの濃度で、Aβペプチドの中でも毒性の高いAβ43(10 μM)処理による培養神経細胞モデルの cell viability 低下を抑制することを見いだした。 平成28年度は、レバミピドがAβ43惹起 cell viability 低下を培養神経細胞モデルで抑制するという前年度の知見に加えて、細胞からの内因性Aβ42の産生をも抑制するという新知見も得た。そこで、これらのメカニズムの解明に傾注した。なお、Aβ42は細胞毒性がAβ43に近いにもかかわらず神経系細胞から定常的に産生されている。検討の結果、レバミピドは、外来性Aβ43の細胞内オリゴマー化を抑制するとともに、αセクレターゼTACEやAβ分解酵素neprilysin等の発現を増強することが分かった。これらのレバミピドの新機能について国際学術雑誌に投稿した(査読中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度における課題遂行開始の遅れ(追加採択:平成27年10月21日内定、平成27年11月20日付通知書)が取り戻せなかったため。特に、レバミピドの新機能について投稿した論文の、再投稿のための追加実験等が難航し、その改訂に多くの時間を費やさざるを得なかったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
上述したこれまでの研究実績の展開に沿って、着実に研究を進める。 レバピミドのAβ産生・毒性抑制効果について、メカニズムの解明を進めることができたので、次に、このレバミピドを加えた薬剤群の協調的抑制効果について改めて至適条件を明らかにし、その協調効果をもたらす機序を検討する。また、新展開の可能性が期待できる天然由来のレスベラトロール二量体(グネチンCなど)について、神経細胞障害に対するその効果・意義の検討を進める方策をとる。 こうして、アルツハイマー病をはじめとする種々の神経変性疾患の治療戦略にもかかわる疾患原因分子生成の制御候補などに対する未報告の薬剤群の効果にも注目し、神経毒性の新しい抑制法開発につながる有望な新知見を得ていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
「11. 現在までの進捗状況」欄で述べたように、初年度における追加採択(平成27年10月21日内定、平成27年11月20日付通知書)による課題遂行開始の遅れが、平成28年も取り戻せなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に引き続き、注目している薬剤群の抗神経変性疾患機能を中心とした新しい機能について、定量PCR法やウェスタンブロット法、RNA干渉法などを駆使し、その制御効果を分子生物学的に検証する。とくに疾患原因分子、なかでもAβをはじめとする神経毒性の高い凝集・蓄積性タンパク質の生成・毒性制御について、神経細胞やアストロサイト等の培養中枢神経系細胞を用いて当該天然有機化合物及び薬剤の効果を検討する。そのために必要な培養細胞・器具や測定試薬・器具等を購入する計画である。
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