研究課題
中枢神経系のpH変化は神経機能に重篤な影響を及ぼすと考えられるが、そのメカニズムは依然不明である。脳神経系には複数のpH感知性Gタンパク質共役型受容体(GPCR、pH 7.6~6.0)が発現している。本計画では、脳虚血や梗塞と関連した生体でのpH感知性受容体の役割を個体レベルで探索している。また、pH感知性GPCRがミクログリア活性制御、神経の細胞死や神経機能への影響をインビトロで解析している。平成27年度では、脳虚血後の細胞ダメージとその回復過程にpH感知性GPCRがどのような役割を担っているか、これら受容体欠損マウスの脳虚血モデルを用いて解析し、以下のような実績を得た。(1)中大脳動脈の虚血(閉塞・再灌流)によりマウス脳組織におけるIba1やGFAPの発現が誘導される。同様に、プロトン感知性GPCRサブタイプのTDAG8発現誘導が観察された。(2)pH感知性TDAG8発現はマウス脳においてIba1陽性細胞に観察された。また、培養の結果からミクログリアに発現しているプロトン感知性GPCRは主にTDAG8であると推測された。(3)pH感知性TDAG8欠損による脳虚血マウスの運動機能、梗塞領域への影響を調べた。脳虚血マウスでは対象マウスに比較して明らかな運動機能傷害を示すが、TDAG8欠損マウスではさらに悪化していた。また、脳梗塞領域はTDAG8欠損マウスで有意に増加した。このように、ミクログリアのTDAG8は中大脳動脈の虚血による脳梗塞に対して抑制的に機能していると推測された。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度では、マウスに中大脳動脈閉塞手術を施し、酸性ストレスに対するプロトン感知性受容体の役割を個体レベルでの解析を中心に探索してきた。プロトン感知性受容体TDAG8が中大脳動脈の虚血再灌流による脳梗塞に対して抑制的な関与が推測された。しかし、虚血再灌流後の脳組織における神経細胞、グリア細胞の詳細な状況を観察すること、これらに関連した機能分子の定量的解析まで至らなかった。今後、他のプロトン感知性受容体サブタイプの解析も含め、このような未解決の項目に関して継続してpH感知性受容体の役割を探索する。
脳虚血による酸性ストレスに対するプロトン感知性受容体の役割を探索するため、マウスの中大脳動脈閉塞による虚血モデルを用いて27年度で未解決の項目に関して継続して行う。また、プロトン感知性受容体が脳虚血と関連したミクログリアの活性制御に関与しているのか、炎症性サイトカイン産生とpH感知性受容体の関連性を解析する。さらに、培養ミクログリアに焦点をあて細胞外酸性pH応答の作用機構を調べる。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) 備考 (3件)
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