研究課題/領域番号 |
15K06771
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鈴木 龍雄 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (80162965)
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研究分担者 |
白井 良憲 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (70342798)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Gtf2i / postsynaptic density / mRNA / local translation / transcription factor / RNA-binding protein |
研究実績の概要 |
H27年度までに,シナプス後部(dendrite)に局在するGtf2i mRNAのsplice variantを1種同定しており,その局在がmRNA の5’UTR配列の違いに基づくものであることを発見していた。既に英文論文としてまとめて発表していたが,H28年度においては ,その結果を国際学会(北米神経科学学会)にも発表するとともに,さらに,Gtf2iでの結果をmRNAがシナプス後部に局在する転写因子群にまで広げて総括しさらに疾患との関連にまで言及した総説を発表することが出来た(Internatl. J. Mol. Sci.)。また,シナプス後部局在型Gtf2i mRNAの5’UTR配列に特異的に結合するタンパク質の同定を試みた。方法としてはビオチンラベルされたヌクレオチドを含むセンス5’UTR配列を人工合成して,ラット脳ライセートとインキュベーションした後,streptavidin beadを用いてセンスRNA配列に結合するタンパク質を回収し電気泳動にかけた。種々のコントロールと比較した後,特異的結合バンドを切り出し,質量分析にかけてタンパク質を同定した。 その結果,mRNA細胞内局在に関わったり,あるいはタンパク質翻訳制御に関わる複数のタンパク質がリストされた。該当タンパク質に対する抗体を入手してWestern blottingを行い,その結合を実証した。次に,それらのタンパク質の内,mRNAの細胞内局在と細胞内局所翻訳の制御の両方に関わるとされ最も重要なものと考えられるものがGtf2i 5’UTR配列の中のどの部分に結合するかを,細分化した5’UTR配列に対して上記のPull downアッセイを行った結果,64 baseまで絞り込むことが出来た。そのほか,Gtf2iタンパク質の核移行,細胞内タンパク質合成を測定するするための種々のコンストラクトを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA-binding proteinの同定の成功により, Gtf2i mRNAのシナプス後部移行やシナプス後部での局所翻訳の仕組みの解明に近づくことが出来た。細胞培養を用いたGtf2i proteinの核移行や局所合成については未だ行えていないが,それに関するマイナーな実験デザインの変更もあって時間を要した為である。しかし必要なコンストラクトは合成しているので,近いうちに行うことが可能である。このため全体としてはおおむね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
Gtf2i 5'UTR内のRNA-binding protein結合配列をさらに小さくしぼりこむ。この領域を欠損させることにより,Gtf2i mRNAのdendrite移行やタンパク質合成が阻害されることを細胞や,個体を用いて証明する。また,今までの実験はrat Gtf2iを対象にした実験であったが,今後はmouse Gtf2iを対象とした実験系にシフトして,遺伝子改変マウスにおけるこの領域の修飾のbehaviorや表現型への影響を調べる実験につなぐ事を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の支出が予想外に低かったこと,また,年度内使い切りの他予算を使用できたため。 大型機器の購入(予定にもなし)や,大規模な機器の修理がなかったため。以上の理由で次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて実験試薬,実験用消耗品代,動物代のほか,旅費,学会参加費用,印刷代などにも充てる。50万円以上の大型機器の購入予定はない。
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