研究課題
MAPKK, PKA, Rap1, RhoAの野生型、恒常活性型、優性阻害型を細胞特異的に発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)を作製し精製した。ドーパミンD1受容体発現細胞特異的にCreを発現するDrd1a-Cre Tgマウス、ドーパミンD2受容体発現細胞特異的にCreを発現するDrd2-Cre Tgマウス、ドーパミン神経細胞特異的にCreを発現するTh-Cre Tgマウスを入手し繁殖した。Rap1a、Rap1bのダブルコンディショナルノックアウトマウスを入手し繁殖した。ドーパミンD1受容体発現細胞特異的プロモータであるSubstance Pプロモータ、ドーパミンD2受容体発現細胞特異的プロモータであるEnkephalinプロモータ、投射型神経細胞特異的プロモータであるCaMK IIプロモータを組み込んだAAVを作製し精製した。上記を用いて、共同研究者の永井らとともにドーパミンの細胞内シグナル伝達経路を解明する研究を行った。ドーパミンD1受容体は三量体Gタンパク質Gαsを介してアデニル酸シクラーゼ、cAMP、PKA経路を活性化する。PKAがRap1の活性化因子(GEF)であるRasGRP2をリン酸化し活性化することでPKAの下流でRap1が活性化することを見出した。Rap1はB-Rafを介してMAPKK、MAPKを活性化することが知られている。PKA、Rap1、MAPKKの恒常活性型をD1陽性細胞特異的に発現させたところ、コカインによる条件付け場所指向性(CPP)試験が促進することが、逆にこれらを抑制したところ、CPPが抑制されることを見出した。また同じマウスの電気生理学的解析を行いPKA、Rap1、MAPKシグナルが神経細胞の興奮性を促進することを見出した。これらの知見について論文報告(Nagai et al. Neuron, 2016)した。
1: 当初の計画以上に進展している
入手や作製したツールを用いて神経回路における細胞種特異的な細胞内シグナル解析を行った結果、ドーパミンD1受容体発現細胞におけるドーパミンの細胞内シグナル伝達経路を解明し論文として報告することが出来た。当初は3年間で解析を行い報告する予定であったが、1年目のうちに報告まで到達することが出来た。
引き続き各種シグナル分子のAAV-Flexベクターを作製する。また側坐核へのPKA、Rap1、MAPK以外のウイルス注入を行い、神経細胞の形態解析実験やCPP試験、電気生理実験を行う。側坐核で表現型の認められた分子について、他の脳部位での実験系を検討する。Rap1以外のコンディショナルノックアウトマウスを入手・作製する。特に、ドーパミンの細胞内シグナル伝達のうちD2受容体発現細胞における解析を行う。またPKA、Rap1、MAPK以外のRhoAについて細胞内シグナル解析を行う。
複数の遺伝子組換えマウスの入手に助成金を使用することを予定していたが、入手したマウスの解析を優先させたため、入手したマウスが予定より少なくなった。
入手を予定していたマウスについては、28年度以降に入手する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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http://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical/dbps_data/_material_/nu_medical/_res/topix/2015/Rap1_20160122jp.pdf