研究課題
平成27年に作製したRhoAの野生型や恒常活性型、RhoAを不活性化するp190RhoGAPを細胞特異的に発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)をドーパミンD1受容体発現細胞に発現させ、神経細胞の形態解析、コカインによる条件付け場所指向性試験(CPP)試験を行ったところ、形態が大きく変化し、CPP試験においても変化が認められた。RhoAはアクチン細胞骨格を制御することで細胞の形態を変化させる。そのため、CPPおける変化が、RhoAによる直接的な作用か、細胞形態変化を介した二次的な作用であるかを確認するためには、RhoAの活性をより素早く制御する必要が出てきた。そこで標的タンパク質を時期・部位特異的に発現させるpAAV-TetOne-Flexシステムを開発した。pAAV-TetOne-FlexシステムにRhoAを不活性化するC3トキシンを組み込んだAAV-TetOne-Flex-C3を作製した。C3トキシンを神経細胞に長期間発現させると細胞がアポトーシスを起こすことを、共同研究を行っている小林らと報告した。D1受容体発現細胞にC3トキシンを一時的に発現させ、CPP試験を行ったところ、大きな変化が認められた。また、RhoAはRho-kinase (ROCK1/2)の活性を制御していることが知られている。Rock1のコンディショナルノックアウトマウスを入手し、Rock2のコンディショナルノックアウトマウスの作製を開始した。ドーパミンD2受容体発現細胞特異的にCreを発現するDrd2-Cre Tgマウスを平成27年に入手したが、このマウスは線条体側坐核以外にもCreを発現させる細胞が存在する。線条体・側坐核のドーパミンD2受容体発現細胞特異的にCreを発現するAdora2a-Cre Tgマウスを新たに入手し繁殖した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成27年に研究が計画以上に進展したため、平成28年度は新たに標的タンパク質を時期・部位特異的に発現させるpAAV-TetOne-Flexシステムの開発に取り組むことが出来た。pAAV-TetOne-Flexシステムの開発は順調に進んでおり、さらなる成果が期待できる。
・引き続き側坐核において神経細胞の形態解析実験やCPP試験、電気生理実験を行う。・開発したpAAV-TetOne-Flexシステムを用いてRhoAの活性を時期特異的に制御し、情動記憶の制御機構のより詳細な解析を行う。・作製したRho-kinaseコンディショナルノックアウトマウスの解析を行う。・これまでに重要であることが認められたRap1やRhoAなどのシグナル分子について、その活性調節機構の解明と、Rap1やRhoAシグナルによる情動記憶の制御機構の解明をすすめる。
Rho-kinaseのコンディショナルノックアウトマウスを作製した際に、予定よりも少額で作製することが出来たため。
次年度の研究推進のための、消耗品購入、コンディショナルノックアウトマウスの入手に使用する。
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