研究実績の概要 |
ドーパミンはドーパミンD1受容体、三量体Gタンパク質Gαsを介してアデニル酸シクラーゼ、cAMP、PKA経路を活性化する。一方、ドーパミンD2受容体、三量体Gタンパク質Gαiを介してアデニル酸シクラーゼ、cAMP、PKA経路を不活性化する。 平成27年度から平成28年度は脳側坐核におけるD1受容体発現中型有棘神経細胞(D1R-MSN)について細胞種特異的な細胞内シグナル解析を行い、快情動に伴いドーパミンが分泌された際、PKAが低分子量Gタンパク質Rap1の活性化因子GEFであるRasGRP2をリン酸化し活性化することで、Rap1、MAPKシグナルが活性化し、神経細胞の興奮性を促進することを見出し、これらの知見について論文報告(Nagai, Kuroda et al. Neuron, 2016)を行った。 平成29年度から平成30年度は、PKAが低分子量Gタンパク質Rap1の不活性化因子GAPであるRap1GAPをリン酸化し不活性化することでRap1が活性化することに着目し、D2受容体発現中型有棘神経細胞(D2R-MSN)について、細胞種特異的にmVenus蛍光蛋白質を発現するDrd2-mVenus Tgマウスを用い、D2R-MSN細胞種特異的な細胞内シグナル解析を行った。D2R-MSNにおいては、アデノシンがアデノシンA2A受容体、Gasを介してアデニル酸シクラーゼを活性化し、ドーパミンがD2受容体、Gaiを介してアデニル酸シクラーゼを抑制している。D2受容体はドーパミンによって常時活性化されており、ドーパミンの分泌が低下し抑制が解除されることでD2R-MSNにおけるPKA、Rap1、MAPKシグナルが活性化することを見出した。これらの知見について論文報告(Zhang, Kuroda et al. Neurochem Int., 2019)を行った。
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