研究課題
本研究は神経障害性疼痛と、随伴する精神症状における活性酸素産生酵素NOX1/NADPHオキシダーゼの役割と制御機構を解明することで、神経障害性疼痛の新たな治療戦略は開発することを目的に行ったきた。本研究では抗がん薬による末梢神経障害におけるNOX1の関与について解析してきたが、パクリタキセル、オキサリプラチン、ボルテゾミブによる末梢神経障害の発現・進展にはNOX1が寄与しないことをNOX1遺伝子欠損マウス(NOX1-KO)を用いて明らかにした。昨年度までの研究により、坐骨神経結紮(SNI)による末梢神経障害の発現にはROS産生酵素NOX1が寄与しないこと、末梢神経障害により惹起される不安様行動発現にNOX1が寄与することをNOX1-KOを用いて明らかにしてきた。最終年度はSNIによりNOX1発現増加が認められた。海馬と視床下部にNOX1発現抑制可能な人工マイクロRNAを搭載したアデノ随伴ウィルス(AAV)を発現させることで各脳領域のNOX1発現を抑制した動物を用いて不安様行動を解析した。その結果、視床下部ではなく海馬でNOX1発現抑制したマウスで不安様行動の減弱が認められた。さらに今年度、SNIによるうつ様行動発現にもNOX1が寄与することを見出した。その責任脳領域の同定を不安行動と同様の手法にて解析したところ、海馬のNOX1がうつ様行動発現に寄与することが明らかとなった。一方、急性拘束ストレスによる不安様行動発現には視床下部のNOX1が、コルチコステロン慢性投与によるうつ様行動発現には前頭前野のNOX1が関わることを見出しており、それぞれ不安・うつ様行動を惹起させる種々のストレスによりNOX1が関わる脳領域が異なることが明らかとなった。
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