研究課題
優性遺伝パーキンソン病(PD)の原因分子Leucine-Rich Repeat Kinase 2(LRRK2)に変異をもつPD 患者は、臨床症状や発症年齢、治療薬レボドパに対する反応性が孤発性PD 患者と類似した特徴を示す。そのためLRRK2 の解析は、PD の発症機序を理解する上で重要と考えられる。我々は、LRRK2遺伝子に変異を有する優性遺伝性PD家系内の患者2名からiPS細胞を樹立し、これらのiPS細胞から分化誘導した神経細胞について機能解析を行った。その結果、iPS細胞から誘導した患者の神経細胞群では、健常者の神経細胞群に比べ、(1)酸化ストレスに対する脆弱性があること、(2)ドーパミンの放出異常があること、(3)細胞内のAKT/GSK-3βシグナル伝達経路の異常によってリン酸化タウが増加することが明らかになった。また、iPS細胞を樹立したうちの1名の患者の死後脳を調べたところ、GSK-3β活性化によるリン酸化タウの増加、そしてそれが脳内に沈着して引き起こされる神経原線維変化を確認した。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、研究計画Ⅰ)iPSC由来神経細胞の機能および形態に関する解析と研究計画Ⅱ)患者剖検脳の解析およびiPSCとの比較から得られた研究成果を学術雑誌に発表した為。
今後、ゲノム編集でLRRK2のI2020T変異を遺伝子修復したiPS細胞を樹立する必要がある。また、薬剤スクリーニングによる神経保護効果をもつ薬剤の探索を進める必要がある。
次年度使用額が生じた理由は、新しいiPS細胞専用培地の購入に関する売買契約が間に合わなかった為。
申請書に記載している研究計画のⅢ)遺伝子修復した患者iPS細胞の作製および解析において、主に使用する予定である。遺伝子修復iPS細胞の樹立には、将来的にヒトへの臨床応用が可能なiPS細胞を樹立を目指すため、売買契約を進めている新しいiPS細胞専用培地を用いて行う予定である。
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Journal of Neuroimmunology
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