研究課題/領域番号 |
15K06782
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
中村 岳史 東京理科大学, 生命医科学研究所, 教授 (60362604)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 細胞内シグナル伝達 / 神経突起伸展 / 小胞輸送 / G蛋白質 |
研究実績の概要 |
G蛋白質TC10は小胞の細胞膜への輸送を介して神経突起伸展に関わると考えられる。申請者らは、主に神経成長因子による突起伸展の系を使って、「小胞上のTC10活性低下による繋留複合体の崩壊がその小胞の膜融合を開始する」というモデルを提案している。平成27年度は、神経細胞株を用いてin vivoでの強力な軸索再生促進因子でもあるcAMPを添加したTC10の活性変化とその分子機構について検討を行い、以下の知見を得た。(1) PC12細胞でTC10をノックダウンするとdbcAMPによる神経突起伸展が抑制される。そこにノックダウン抵抗性の野生型TC10を発現させると伸展抑制は解除されるが、TC10の恒常活性型変異体を発現させても抑制は解除されなかった。この結果は、dbcAMPを加えた時に見られる細胞膜とごく近傍でのTC10不活性化が、突起伸展に正に働くというモデルを支持する。(2) dbcAMPによる不活性化にはPKAとp190Bが必要である。ただしPKAがp190Bをリン酸化する可能性は低く、何らかの因子が媒介していると考えられる。また、軸索ガイダンスや損傷軸索の再生に関するTC10の働きを個体レベルで解析するために作製したノックアウトマウスを使って、運動神経軸索の損傷再生の系を用いて検討を行い、TC10が軸索再生の促進に働いていることを示唆する結果を得た。 神経突起伸展時の膜制御においてRab11が組み込まれているマシナリーがどう働いているかを明らかにするために、Rab11のFRETセンサーの開発を進めた。現時点で最も性能のよいセンサーのダイナミックレンジは26.7%であり、イメージングに使える目安にかなり近い。このセンサーを使って、神経細胞株の突起でのFRETイメージングを行い、突起上を移動する小胞間にRab11活性の高低が存在することを示唆するデータを得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象として選んだ「膜輸送を介して神経突起伸展を促進する3つのG蛋白質」のうち、TC10とRab11について新たな知見を得ることができた。特に、TC10の個体レベルの解析からこの分野にとって重要なアイデアが生まれる可能性があると考えている。Rab35についてもおおむね研究計画にそった解析を行ったが、技術的な難点のため進捗が不十分であり、総合して上記のように評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
TC10 KOマウスの軸索走行の解析を進め、軸索再生能やin vitroでの神経突起伸展のデータを合わせて得ることで、平成27年度に得られた個体レベルでの解析結果をさらに深める。また、これまでに明らかにしたTC10が関わる細胞内シグナルの視点からの意味づけを試みる。Rab11についてはFRETセンサーを使った神経突起での活性化イメージングをさらに進め、特に小胞輸送速度とRab11活性との定量的関係を検討する。Rab35については、共焦点顕微鏡を使った活性化イメージングの再現性を高める工夫をした上で、研究計画に沿って解析を進める
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末近くに予定していた動物実験を繁殖などの事情により延期したため、関連した消耗品の注文を次年度に繰り越した
|
次年度使用額の使用計画 |
繰り越された消耗品を次年度に購入して予定されていた動物実験を行う
|