cAMPを添加した神経細胞株において、G蛋白質TC10の活性化機構について検討を行い、cAMP-PKA-STEF-Rac1-p190Bという経路によりTC10とRhoAの不活性化が誘導され、それらが膜付加と神経骨格の再編成を介して神経突起伸展を起こしていることを明らかにした。損傷軸索の再生などに関するTC10の働きを個体レベルで解析するために、KOマウスを作出した。発生期に起きる神経突起成長には野生型とKOの間に顕著な差がないのとは対照的に、成体での軸索再生能は野生型に比べてKOでは顕著に低下した。舌下神経(末梢神経) 損傷モデルで検討したところ、TC10 KOでの再生は野生型に比べて明確に低下した。哺乳類成体の中枢神経軸索は本来再生しないが、様々な操作を組み合わせることである程度まで再生する。軽度の視神経再生を誘導する系で検討したところ、中枢神経に属する視神経でも、損傷からの再生能には野生型とTC10 KOの間に違いが認められた。従ってTC10は成体マウスの神経再生で重要な役割を果たしていると結論できる。これまでのRab11のセンサーのデザインに、さらにcp FRET法を応用してより広く最適構造を探索し、40%程度のダイナミックレンジ(感度に相当する)を持つRaichu-A760を開発した。このセンサーを神経細胞株N1E-115に発現させて、神経細胞株の突起上を移動する小胞でのRab11活性を検討した。予備的結果が得られているがより慎重に検討中である。ダイナミックレンジが50%程度のRab35センサーを作製して、NGFによるPC12の応答などの系で検討を行った。Rab35は細胞膜と小胞にあるので、共焦点顕微鏡を用いたFRETタイムラプス観察が必要だが、このセンサーがほぼ所定の機能を持つことが確認できた。
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