研究課題/領域番号 |
15K06784
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
田村 英紀 星薬科大学, 付置研究所, 准教授 (80437516)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パルブアルブミン / 神経可塑性 / 海馬 / 扁桃体 / 細胞外マトリックス |
研究実績の概要 |
パルブアルブミン陽性(PV)細胞は多数のニューロンと結合しているため、PV 細胞の活動が変化すると神経ネットワーク活動に大きな影響を与える。実際、PV 細胞の活動を抑制すると空間作業記憶が障害される。しかしながら経験依存的に変動するPV 細胞のダイナミクスはほとんど明らかとなっていない。本年度はエンリッチメントな環境飼育(EE)がPV 細胞に与える影響を調べた。EE はニューロン新生を促進することが知られているため、まず海馬歯状回において新生ニューロンの数をPSA-NCAM 抗体を用いて測定した。その結果、EE 群ではPSA-NCAM 陽性細胞の数が増大し、またBDNF の発現も増大していた。この条件下で海馬におけるPV 細胞の数および形態を調べてみると、PV 細胞の数は変化しなかったが細胞面積が増大していた。また興味深いことに細胞面積が大きいPV 細胞のほとんどがペリニューロナルネットに覆われていることがわかった。ペリニューロナルネットは細胞の成熟レベルに依存して発現することが知られているため、EE によってPV 細胞の成熟が促されたと考えられる。 次に扁桃体におけるPV の局在を調べたところ、PV 細胞の数は吻側扁桃体よりも尾側扁桃体の方が多いことがわかった。また吻側扁桃体はPV 細胞数は少ないが細胞面積は尾側よりも大きく、そのほとんどがペリニューロナルネットを発現していた。このことから尾側扁桃体は未成熟なPV 細胞が多く、またそれによってEE の影響を強く受けると考えられた。実際、尾側扁桃体のPV 細胞はEE によってその細胞面積が増大し、またペリニューロナルネットの発現も増加した。以上のことから、これまでPV 細胞の状態は固定的であると考えられてきたが、興奮性細胞同様に経験依存的にその状態がダイナミックに変動することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画に記載した経験依存的なパルブアルブミン陽性細胞の状態変化を捉えることに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
経験依存的に状態変化した細胞が記憶に与える影響を明らかにするために、ペリニューロナルネット発現細胞の活動レベルと記憶強度の相関を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
エンリッチメントな環境飼育の条件検討が予想よりもうまくいったため。
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次年度使用額の使用計画 |
恐怖条件付け学習試験に関わる消耗品を購入する予定である。
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