高齢化社会を迎えた現在、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD) は増加する一方であり、その原因・メカニズムの解明と予防・治療法の開発が待ち望まれている。本研究では、家族性AD のうち、アミロイドβタンパク(Amyloid β protein; Aβ)内にアミノ酸残基の変異が見られ、脳実質に変異型Aβの蓄積が見られるArctic 型変異 (E22G) に着目をして研究を行ってきた。特に、Arctic AβがCHRNA7 の関わる神経細胞の機能である、神経細胞死抑制効果と記憶の分子メカニズムを阻害しているという仮説を立て研究を推進してきた。本年度はこれまで論文発表した内容について総括を行い、総説を英文雑誌に発表した。その内容は、AβがCHRNA7 に結合しないのに対して、Arctic Aβが高親和性でCHRNA7 と特異的に結合し、CHRNA7 存在下において、Arctic Aβの凝集が亢進することと、Arctic Aβは、CHRNA7 の機能を抑制し、細胞内カルシウムイオンの上昇の抑制、Extracellular-signal-regulated kinase (ERK1/2)の活性化の阻害をすること、さらに、Arctic Aβ がCHRAN7 に結合・凝集する事により、その機能である神経細胞死抑制効果への関与を阻害していること、このうち神経細胞死抑制効果への影響として、CHRNA7の活性化からその下流のシグナルについて検証したことについて総括を行い、考察と今後の展望について記述した。
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