研究課題/領域番号 |
15K06790
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
遠山 正彌 近畿大学, 東洋医学研究所, 教授 (40028593)
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研究分担者 |
田中 貴士 近畿大学, 東洋医学研究所, 助教 (30734694) [辞退]
清水 尚子 近畿大学, 東洋医学研究所, 助教 (50572731)
宮田 信吾 近畿大学, 東洋医学研究所, 教授 (70403194)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DISC1 / アストロサイト / 分化 / 統合失調症 |
研究実績の概要 |
DISC1は統合失調症脆弱因子として同定されて以来、我々を含めてほとんどの研究グループが神経細胞での機能解明に焦点を合わせて研究を進めてきたが、ニューロン以外の神経系の構成分であるグリア細胞におけるDISC1の機能についてはほとんど関心が向けられていなかったのが現状である。 そこで本研究では、ニューロンやオリゴデンドロサイトのみならずアストロサイトに豊富に存在するDISC1がアストロサイトの増殖、移動、分化、オリゴデンドロサイトとのクロストークあるいは脳傷害時の反応性アストロサイトへの分化などに関与するか否か明らかにする。 これまでの検討から、成熟脳における成熟アストロサイトではDISC1発現が弱いことをはじめ、生後7日のマウス脳での免疫組織化学的な検討などから、線維型アストロサイトおよび放射線型アストロサイトでのDISC1の十分な発現を見出している。 平成28年度は、DISC1の機能解析のためまずはアストロサイトの初代培養系を構築した。さらにこの初代培養アストロサイトを用いてDISC1の発現レベルと増殖や分化、移動との関連性を検討するための予備検討を開始した。その結果、GFAP陽性の成熟型アストロサイトへの分化過程においてDISC1発現との関連性が弱い可能性を免疫組織化学的な検討により見出した。 さらにこの結果を検証するために、マウス脳における中枢神経障害時のDISC1発現について検討を加えた。中枢神経の虚血,外傷、炎症などの際にはアストロサイトの細胞体は肥大し、突起も伸長し反応性アストロサイトと呼ばれる細胞へと変化するが、この反応性アストロサイトでのDISC1発現について免疫組織化学的などの検討を行った結果、DISC1発現増加は観察できず、マウス脳における検討でもDISC1とアストロサイトの分化過程との関連性が弱い可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度から準備を始め、本年度に確立したアストロサイトの初代培養系は順調である。平成28年度は、この初代培養系を用いたDISC1発現と分化との関連性の検討を行うと共にマウス脳への中枢神経障害時に観察される反応性アストロサイトでのDISC1発現変化について検討を行い、アストロサイトの分化過程とDISC1発現との関連性が弱い可能性を見出している。これらは、平成28年度以降の当初計画にほぼ沿った内容に関する成果であり、平成29年度は残りの増殖過程と移動過程に関しての詳細な検討、さらには神経細胞やオリゴデンドロサイトとの共培養系を用いて髄鞘化への影響についての検討を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、これまでの研究成果を元に初代培養アストロサイトを用いて、アストロサイトの移動や増殖過程への影響や成熟後の役割の有無などのDISC1の機能解析を行う。 まず、DISC1 siRNAを用いてDISC1発現を抑制した培養アストロサイトを用いて、増殖への影響についてはELISA法やPCRなどで、移動への影響についてはwount healingアッセイ法などにより検討を加える。変化が観察された項目に関しては、DISC1発現抑制後に強制発現による発現回復後の評価も加える。さらに、神経細胞やオリゴデンドロサイトとの共培養系を用いて髄鞘化への影響についての検討を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初代培養の系構築に必要なマウスが予定よりも少なく済んだのと、実験の振り分けの過程で細胞増殖や移動に関する検討に必要な試薬類の購入を本年度行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
初代培養アストロサイト作製に必要なマウスの経費として使用すると共に細胞増殖や移動に関する検討の経費として使用する予定である。
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